研究実績の概要 |
圧力センサーは,気体,液体,固体など,あらゆる物質間に作用する力量検出素子であり,通常歪みに依存した抵抗変化を示す材料が用いられる。圧力センサーのうち,金属製の歪ゲージは約 800℃まで使用可能であるが精度がシリコン製に劣る。シリコン製のものは精度の面で金属製よりも優れているが,シリコンが約 300℃で塑性変形するため耐熱限界温度が 300℃程度となっている。そこで,300℃以上の耐熱性を有し,高精度な圧力センサーの開発が求められている。報告者は,セラミック中に導入した気孔の圧力による形状変化を利用したセンサーの開発を行なっている。 このセンサーは材料がセラミックであるため耐久性,耐食性,耐熱性に優れ,またシンプルな構造のため量産しやすいメリットがある。昨年度までの研究において,400℃までの温度範囲であればZnO発泡体は加圧・除圧における抵抗変化を示し,センサー素子としての応用が可能であることを示した。本年度は,異種元素(Ag,Li)のドーピングによって母体の抵抗値を変化させることで,センサー感度の向上や500℃以上での高温測定が可能な試料の作製を目的とした。 Li添加試料での高温測定(500℃)における加圧時の抵抗変化を測定したところ、無添加試料と比較して,加圧・除圧に対する抵抗変化がはっきりと表れるようになった。これはLi添加によってZnO母体の抵抗が増加し,高温においても試料内部の気孔周辺を電流が流れるようになったためであると考えている。本研究での常温・高温におけるセンサー感度はともに,既存材料の約10倍以上の値を示しており,高温条件下でも使用可能な圧力センサー素子になり得るということが示された。
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