液晶、有機ELパネル用の薄膜トランジスタや薄膜太陽電池は主としてシリコンを用いて作製されているが、低温での結晶化が難しいことからアモルファスの状態で利用されることが多い。したがって、低温で効率的に結晶半導体を作製するプロセスを開発できれば、上記の応用においても高性能な結晶薄膜を利用することが可能となる。本研究では、結晶化を促す金属触媒を利用した新規な結晶化手法の開発を目指す。300℃以下での結晶化を実現出来れば、プラスチック上への成膜も可能となり、無機物質による高性能半導体を利用したフレキシブルデバイスの実現に貢献することもできる。 低温結晶化を促す触媒としては、シリコンやゲルマニウムと共晶を形成するものが多い。結晶化の機構を調べる目的で、Ag表面上に微量のSi、Au表面上に微量のGeを蒸着して走査トンネル顕微鏡による表面観察を行ったところ、室温においてステップが変形を続ける、新規な現象を観察することができた。これは表面において、物質の移動が促進されていることを示唆しており、低温結晶化現象との関連をうかがわせるものである。また、加熱基板上にGeとAuを同時に供給することで、結晶化温度を下げることができることを新たに見出した。これは、成長表面に過冷却液相が存在するためであると考えている。また、形成されたGe薄膜は通常、p型となるが、P等のドーパントを一緒に供給することでn型の薄膜を成膜できることも見出した。n型、p型が揃うことで、pn接合やCMOSの実現など、今後、応用範囲が広がることが期待される。
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