研究課題/領域番号 |
25289236
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
金児 紘征 秋田大学, その他部局等, 名誉教授 (20006688)
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研究分担者 |
福本 倫久 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (20343064)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ジルカロイ / 水蒸気酸化 / 酸素センサー / 水素センサー |
研究実績の概要 |
福島原発事故で過酷事故に至る初期段階として,ジルカロイ被覆管破損事故があった.それを契機として,実際に冷却不良下ではジルカロイ被覆管はどのように酸化,破損するかを想定して具体的に模擬した研究の重要性を認識した.そこで,高温に曝されたジルカロイに生成するZrO2皮膜がその変態温度通過時に酸化,破損することが最も深刻であると想定し,その状況を新規の方法で調べる. 具体的には,ZrO2の変態温度(1205℃の単斜晶→正方晶変態,1525℃の正方晶→立方晶変態)付近で電気炉を温度振動させて熱重量,発生水素量のその場測定をして酸化特性を調べる.また,被覆管内に核燃料の代わりに発熱体を挿入した実験系を組み立て,冷却不良状態を模擬して,ジルカロイの酸化,破損する過程をデモンストレーションし,温度振動の結果と比較して検証する. Ar-O2-H2O(323K飽和水蒸気)混合ガス流体中に所定温度で保持したジルカロイ4の酸化挙動を後段に設置した水素センサー,酸素センサーで調べ,酸素の影響および温度変化の景況について検討した.酸素センサーで求めた酸素分圧変化から酸化に寄与した酸素消費量を算出できた.また,水素センサーで求めた水素分圧変化から水蒸気分解で発生する水素発生量を算出でき,あわせて酸素消費量を算出できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ジルカロイの酸化について,酸素消費型酸化と水蒸気分解型酸化の寄与の割合を算出できた.酸化反応は,酸素消費型酸化が優先し,元のガスに含まれた酸素が完全に消費されると,水蒸気分解による酸化が進行した.等温酸化実験を行うと,1173Kでは,1%以上の酸素雰囲気では酸素の消費による酸化のみで水蒸気酸化は進行しなかった.1523Kでは,反応初期に酸素が激しく消費されるために,5%酸素では水蒸気酸化も観察された.昇温酸化実験を行うと,1%酸素では1373 Kあたり酸素が完全に消費され,それ以上の温度で水蒸気分解が進行した.熱サイクル酸化実験を行うと,温度の変化とともに酸素消費型酸化の領域,酸素消費型に水蒸気分解型酸化が加算される領域を明確に観察できた.サイクル回数が増すとともに,全体の酸化量が減少し,水蒸気分解型酸化の寄与も少なくなった.酸素消費型酸化と水蒸気分解型酸化過程を熱力学的に考察した.
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今後の研究の推進方策 |
ジルカロイの水蒸気酸化の模擬実験では、発生する水素の濃度が高く、実験遂行には細心の注意を要する。そこで、昨年度は、各種温度でジルカロイの酸化過程で発生する水素分圧の実験値、試算値から安全性を考慮していかに模擬実験ができるかについて考察し、基礎的な知見を得た。そして、模擬実験に用いる材料を準備し、ジルコニア管内部に内蔵する発熱体の性能試験をした。また、(1)の実験の過程で、急激な温度変化でジルカロイがどのように破損するかの知見を得た。本年度は、次の手順で模擬実験を行う。水中に沈んだ発熱体を内蔵した小規模ジルカロイ管の水を抜き、水素の発生状況とジルカロイの破損状況を内蔵発熱体温度(空焚き状態の温度)をパラメータにして調べる。そして、どのような模擬実験系が適切な模擬実験になるかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
酸素センサーおよび水素センサーを用いた酸化挙動の検討に関する実験は,十分な成果が得られたと考えられるため、次年度行われる模擬実験に重点配分するため次年度使用理由が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
模擬実験を行なうためにジルカロイ管の購入に使用する予定である。
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