研究課題/領域番号 |
25289238
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
井原 郁夫 長岡技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80203280)
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研究分担者 |
松谷 巌 長岡技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00514465)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | レーザー超音波 / 円柱 / 温度プロファイリング / 非接触計測 / 超音波パルスエコー / バルク波 / 温度同定 / 摩擦加熱 |
研究実績の概要 |
本研究は、加熱状態にある高速回転体の表面および内部の温度プロファイルをリアルタイムかつ定量的にモニタリングするための超音波サーモメトリを創成するとともに、この手法を高温場の材料加工プロセスに適用し、その有効性を実証することを目的とする。このような革新的手法を開発することで、従来技術では成し得なかった回転工具や被加工材の3次元温度分布の定量的オンプロセスモニタリングを実現することを目指す。今年度は、レーザー超音波法を用いた円柱端面近傍の非接触温度プロファイリングを目指した。主な結果は次のとおりである: (i)レーザー超音波法を用いた円柱体のバルク波および表面波の非接触計測に関する検討 円柱体側面にパルスレーザーを照射したときに励起される縦波、横波および表面波の伝播挙動を、レーザー干渉計またはレーザードップラー変位計で計測し、各波の伝播経路ならびに信号SN比の観点から、温度プロファイリングに適した計測条件ならびに計測系を詳細に調べた。直径30mm程度のアルミニウム円柱を用いた実験により、レーザードップラー振動計を用いることで、縦波、横波および表面波のいずれも検出可能であることが実証された。 (ii)2種類のバルク波をパラメータとした円柱端面近傍の温度プロファイリング法の開発 上記の結果に基づいて、2種類のバルク波の同時計測による円柱端面温度およびその近傍の温度プロファイリングのための逆解析手法を開発した。具体的には、上記アルミニウム円柱の側面にパルスレーザーを照射したときに励起される横波が約45度の入射角にて円柱端面に入射し、同端面で反射する成分と、同時に側面で励起される縦波の半径方向伝播成分の二つの波を指標とすることで、同端面近傍の1次元温度分布(軸方向に1次元分布している)を同定する手法を開発した。一端が加熱されるアルミニウム円柱を用いてこの手法の妥当性を検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の所期の目標は、(1)材料表面へのパルスレーザー照射によって励起される縦波、横波あるいは表面波をパラメータとして、加熱材料の温度プロファイリングの可能性を確認すること、さらに、(2)これらの波を駆使して、材料端部および内部の3次元温度モニタリングの可能性を探ること、の2点であった。これに対して、(1)については、パルスレーザー照射により励起される横波の斜入射成分と縦波の半径方向伝播成分(いずれも円柱側面へのレーザー照射により同時に励起されたもの)を効果的に活用することで、加熱面近傍の温度プロファイリングが可能であることが実証された。(2)については次年度の課題とすることとした。これらのことから、本年度の所期の目標は十分に達成できたとは言えないが、次年度に繋がる有効な結果が得られたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
26年度の結果に基づいて、回転体の3次元温度分布モニタリングについて検討する。基本的には、レーザー超音波計測を用いた非接触計測とその2次元スキャニングを駆使することで3次元温度分布同定手法を試みる。さらに、高速回転体と静止材料との摺動界面(摩擦界面)の温度モニタリングについて検討し、超音波サーモメトリの高度化を進めていく。具体的には、 (i) 加工プロセスの温度プロファイリングを想定して、摺動摩擦により一端が加熱される材料の摩擦界面近傍の温度プロファイリングに関する基礎実験を行なう。まずは、フェルトとの摺動摩擦によりその底面が過熱される鋼厚板の摩擦面の温度計測を試み、超音波法による測定結果を鋼厚板に埋め込んだ熱電対による測定値と比較することでその妥当性を検証する。 (ii) 2次元または3次元熱伝導解析と、2次元または3次元温度場に対する超音波伝播解析を行い、3次元温度プロファイリングのための逆解析手法について検討する。 (iii)次いで、端面が摩擦加熱される円柱回転体内部の非接触温度プロファイリングに関する検証実験を行なう。この実験に先立ち、超音波パルスエコーに基づく温度プロファイリングのための計測条件を、時間分解能と空間分解能と測定精度との観点から理論的に詳細に検討し、温度プロファイリングの高度化をはかる。さらに、温度モニタリングのロバスト化をはかる。マシンの稼動環境下では想定外のノイズ等の悪影響も予想されるので、信号処理を含めてソフトおよびハードの両面から対策を講じ、開発したシステムの実用性を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の決算が遅れたため、会計上の理由により次年度に繰り越されたものです。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度中に納品され研究遂行上は影響なかった。平成27年度に消耗品購入の一部として使用する予定です。
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