研究課題/領域番号 |
25289242
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤本 公三 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70135664)
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研究分担者 |
福本 信次 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60275310)
松嶋 道也 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90403154)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 銅 / 低温接合 / 固液共存 / 多層金属薄膜 / 熱応力 / 金属間化合物 / サイズ効果 |
研究実績の概要 |
昨年度、数十μmのCuバンプを設けたSi-TEGチップとSiチップとの接合界面に固相Cuと液相Snの積層マルチフェイズを介して接合することに成功した。その一方で、最終接合層Cu3Snと被接合材の物性のミスマッチに起因した熱応力が生じることも明らかになった。この熱応力は接合層をAg3SnなどのCu3Snよりも硬度の小さい物質に置き換えることで軽減できることが示唆された。そこで本年度では、接合層をCu3Sn以外に置換するのではなく、被接合材(SiチップおよびCu)および接合層Cu3Snのサイズ効果が接合部の信頼性に与える影響について有限要素法による解析を行った。以下にその概要を記す。 Siチップの厚さを0.2から1.0mmまで増加させると、チップ端部のせん断応力および主応力はそれぞれ22%、38%増加した。Siチップのサイズを2mmから10mm 角に増加させると、チップ端部のせん断応力が17%増加したが、主応力には1~5%とそれほど大きな変化は見られなかった。Cuの板厚を0.3~1.0mmに変化させた場合、チップ端部の主応力およびせん断応力は10%程度まで増加した。いずれのサイズを増加させた場合も接合層端部に生じる熱応力の増加は数%であった。おおむね被接合材のサイズ増大はチップ端部の熱応力の増加を引き起こすことが明らかになった。実際にCu/Snマルチフェイズを用いて0.65mm厚/2mm角のSiチップと0.5mm厚/12mm角の銅薄板をCu3Sn層を介して接合した場合、健全な接合部の形成に成功した。一方で、Siサイズによっては、チップ端部からクラックが生じるケースも観察された。一般的に用いられるような数mm角のチップサイズに対して本接合法が適用できることが明らかになったが,クラックの生じる詳細な条件等についてはさらに検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
液相と固相を交互に積層した状態で接合部に出現させることで,早期に高融点金属間化合物を形成することが可能となる.昨年度は,その方法によって微小Cuバンプを有するSiチップとCuを数μm厚さのCu3Sn接合層を介して接合できることを示した.その際,接合部近傍にはSiチップ,Cu,Cu3Snという3相が存在することになり,接合温度から室温へ冷却する際の熱応力発生が問題となることが懸念された.本年度はその材料ミスマッチに起因した熱応力に対する被接合材のサイズ効果の影響を調べることで,マルチフェイズ接合法の適用範囲を明らかにすることを試みた.サーマルサイクル試験およびパワーサイクル試験による接合部の信頼性評価は次年度に行う予定である.このほかAl-Zn系の共晶系の接合層の探査も始めており,おおむね順調に進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、Cu-Sn 2元系多層薄膜を用いて接合したSiチップとCuとの接合剤において,材料ミスマッチに起因した熱応力に対する被接合材のサイズ効果の影響を調べた.それによって本課題で提案したマルチフェイズ接合法の適用範囲を明らかにすることを試みた.H27年度は、この結果をもとに以下のように研究を進める予定である。 1)多元系合金の探索:Cu-SnおよびAg-Sn系以外にAl-Zn、Cu-Zn,Al-Ni系など比較的低温で液相生成が可能な元素について、Ag、Ni、Bi、Inなどの添加元素も含めてそれらの反応熱、反応温度の熱分析を行い、接合層として適用可能な合金系を探索する。また,その反応によって生じる金属間化合物の物性(弾性率,線膨張係数,熱伝導率など)評価を行う.またその物性を有限要素法解析に反映させる. 2)信頼性の評価:マルチフェイズ接合法による実装を行ったSiおよびSiCチップ接合部に対してサーマルサイクル試験のみならずパワーサイクル試験等の環境試験を行う.パワーサイクル試験においては,発熱が避けられないためチップ近傍の温度分布の計測を行い,電気-熱シミュレーションとあわせて接合部の温度上昇と組織変化の関係を明らかにする. 3)接合層合金形成プロセスの明確化:接合層の形成過程はおもに走査型および透過型電子顕微鏡による断面観察をすることで明らかにする。熱分析およびX線回折などの結果と合わせてその液相、固相の共存状態の変化を調べ、接合メカニズムを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の研究計画において,当初予定していた物品費が安くなったこと,また研究調査のための出張回数が当初予定よりも少なくなったことにより,281,592円を次年度の研究費として残した.
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度から繰り越した研究費は,多元系合金探索、接合層合金形成プロセスの明確化および前年度実施予定であった信頼性評価のためのマルチフェイズ接合の被接合材および接合部断面観察のための研磨用消耗品の購入に充てる予定である.
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