研究課題/領域番号 |
25289246
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
橋本 真一 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60598473)
|
研究分担者 |
雨澤 浩史 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (90263136)
井口 史匡 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00361113)
中村 崇司 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (20643232)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 固体酸化物形燃料電池 / 空気極 / 三相界面長 / 電極反応 / イオン電子混合導電体 / パターン電極 |
研究概要 |
固体酸化物燃料電池(SOFC) における空気極の過電圧応抵抗の低減策として、三相界面を増やすコンポジット化が一般的である一方、主要な高性能混合導電性空気極材の反応の律速段階は、電極表面であると考えられており、三相界面での反応の寄与について、定量的な検討はなされていない。本研究では、電解質基板上に電子-イオン混合導電性緻密パターン電極を作製することで、三相界面長の制御を行い、電気化学測定や、酸素同位体交換反応させた試料のSIMS分析により、電極反応全体に対する三相界面での反応の寄与を定量的に評価する技術を確立する。 初年度は測定手法の基盤となるパターン電極作製技術の確立を行い、一部電気化学的評価を行った。パターン電極の作製は、まず、GDC (Ce0.9Gd0.1O1.95)電解質基板上にパルスレーザーデポジション法(PLD法)でLa0.6Sr0.4CoO3-d(LSC)薄膜形成の最適化を行い、基板温度800oC、レーザー波長266nm、レーザー出力約0.15W、パルス周波数10Hz、酸素分圧1Pa、成膜時間4時間の条件で、膜厚300nmの単相緻密薄膜の作製に成功した。次にパターン電極作製のための加工プロセスを検討したところ、薄膜上にレジストを塗布し、パターン形成後、高速原子線エッチング(FAB:fast atomic beam)装置を用いて加工することにより、三相界面・電極面積比340cm-1のパターン電極作製に成功した。そこで電極面積が等しくパターンを形成していない三相界面・電極面積比6.45cm-1の電極の界面導電率を調べたところ、600oCでは僅かにパターン依存性が確認されたが、その影響は非常に小さかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、予定していたパターン作製にはリフトオフ(基板上にレジストを塗布しパターンを露光して、エッチングを経ずに,マスクの上から蒸着するだけで直接パターンを形成する方法)にてパターンを作製する方法を検討していたが、電極薄膜成膜後のレジストを選択的に除去できない、成膜時の基板温度に制約があり、また、結晶化のための熱処理を施しても剥がれが生じる等の不具合が生じていた。電極薄膜成膜後、パターンを形成、エッチングするプロセスに変更してからは、加工精度は向上し、電気化学測定が可能なレベルにまで達成出来たが、より高い微細加工や作製した試料を用いた酸素同位体交換反応処理後のSIMS分析は未達になってしまった。
|
今後の研究の推進方策 |
より高い微細加工技術を開発し、GDC (Ce0.9Gd0.1O1.95)電解質基板上のLa0.6Sr0.4CoO3-d(LSC)電極における三相界面の影響を顕在化させて、電極反応を検討する。具体的には、より微細加工に適したクロムマスク、イオンミリングを採用し、ミクロンオーダーの微細加工を行うことで、三相界面・電極面積比1000cm-1台を目指す。また、また関連テーマとして同じLSCを空気極として用いても、電解質にプロトン導電体であるSZY(SrZr0.9Y0.1O3-d)を用いれば、電極反応が大きく変化する事が当研究室内の成果として分かり始めている。セラミックプロトン導電体を用いた燃料電池(PCFC)は通常のSOFCより低い温度で作動可能なため、その電極反応の解明は意義が深い。よって今後、プロトン導電体の基板上のパターン電極についても検討を進める。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当初、予定していた「英国ソーラトロン社製 電気化学測定システム, 1255WB」よりも高性能(対極の即時測定)な「英国ソーラトロン社製 モジュール式電気化学測定システム ModuLab」を代理店(株式会社東陽テクニカ)営業戦略上から期間限定で安価に購入出来た事、パターン電極作製のためのプロセス開発のための進捗が遅れたため、電気化学測定関連の消耗品類の購入が控えられた事の二点により、次年度使用額が生じた。 本年度、執行を予定していた電気化学測定関連の消耗品類の購入を次年度、実験の進捗に併せて行う。また、本年度の実績から考えて、パターン電極の電極反応測定(インピーダンス測定)はより低周波まで測定する必要があり、その結果、測定時間が非常に長くなった。パターン電極の作製プロセスの目処がたった次年度はより多くの時間を電気化学測定に費やす可能性が高いため、複数の電気化学測定系の増設が必要と考えられた。そこで次年度ではセルを取付ける電気化学測定用雰囲気制御測定系を作製するとともに、比較的安価な電気化学測定装置を追加購入し、優先度の高い測定や直流分極測定の必要なセルを「ModuLab」、通常の優先度のセルを追加購入する電気化学測定装置で測定して、円滑な研究の進捗を実施する。
|