研究課題/領域番号 |
25289249
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
石丸 学 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00264086)
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研究分担者 |
内藤 宗幸 甲南大学, 理工学部, 准教授 (10397721)
佐藤 和久 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (70314424)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ナノ構造材料 / 照射効果 / アモルファス化 |
研究実績の概要 |
原子力発電所から排出される高レベル放射性廃棄物の処理が世界規模で問題となっている。現在、高レベル放射性廃棄物はガラスと共に融解され、ステンレス容器へ注入・固化されている。しかしながら、ガラス固化体の寿命は数百年程度で、放射性元素崩壊の半減期に較べるとかなり短い。放射性廃棄物を人類から長期間に渡って安全に隔離するには、新たなコンテナ材料の開発が急務である。 放射性元素は崩壊の際に多量の放射線を発生し、周囲の材料に原子レベルの欠陥を与える。このため、照射環境下に曝されても、構造変化やそれに伴う材料劣化が起こらないことが、コンテナ材料に対する1つの要求となっている。最近我々は、低次元ナノ構造化により、炭化ケイ素(SiC)の耐照射性が飛躍的に向上することを見いだした(Phys. Chem. Chem. Phys. 14 (2012) 13429)。この原因を明らかにするため、本年度は照射温度と耐照射性の関係について調査した。 透過電子顕微鏡法による断面観察およびモンテカルロシミュレーションの結果、室温では3.5dpa(displacement of atom:1個当たりの原子が変位した回数)、低温では0.53dpaでアモルファス化が起こることが示唆される。バルクSiCに室温および低温でSi照射を施した場合、それぞれ0.5dpaおよび0.2dpaでアモルファス化が生じることが報告されている。我々のナノ構造を導入したSiCでは室温で3倍、低温で2倍程度、耐照射性が改善されていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的であるナノ構造化による耐照射性の向上に成功しているため。
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今後の研究の推進方策 |
ナノ構造SiCにおける耐照射性の向上には面欠陥が寄与していると考えられ、原子レベルでの構造情報の取得が必要不可欠である。しかしながら、通常の電子顕微鏡法では最隣接のSi原子とC原子を分離して観察することが出来ない。そこで、サブオングストロームの空間分解能を有する球面収差補正電子顕微鏡を用いてナノ構造SiCの観察を行う。得られた原子配列を基に分子動力学シミュレーションを行い、点欠陥の移動度に及ぼす面欠陥の影響について詳細に調べる。加えて、イオン種、エネルギー、照射温度を変化させて、ナノ構造SiCに照射実験を行い、耐照射性向上の起源を明らかにする。
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