我々は、多量の面欠陥を含む炭化ケイ素(ナノ構造SiC)において耐照射性が向上することを見出している。照射により導入された格子欠陥の移動が、面欠陥の間に2次元的に制限されることが、耐照射性向上に寄与していると考えられる。その詳細を明らかにするには、面欠陥の構造情報の取得が必要不可欠である。 [110]方向に投影したSiとCの距離は0.13nmであるが、通常の電子顕微鏡の空間分解能は0.2nm程度であり、両者を分離することが出来ない。そこで、サブオングストロームの空間分解能を有する球面収差補正電子顕微鏡を用いて、ナノ構造SiCの極微構造解析を行った。まず、欠陥を含まないSiCを用いてSiとCの分離および区別が可能か検証した。シミュレーションとの比較により、[110]方向からの観察によりSiとCが分離できることが確認された。本装置によりナノ構造SiCを観察したところ、通常の電子顕微鏡では見ることが出来ない格子の歪みが確認された。この歪みは積層欠陥近傍で大きく、積層欠陥から離れると小さくなることが確認された。この局所的な歪みの存在が、格子間原子や空孔の移動に影響を与えていると考えられる。
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