研究課題/領域番号 |
25289250
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
白鳥 祐介 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00420597)
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研究分担者 |
古山 通久 九州大学, 学内共同利用施設等, 教授 (60372306)
北岡 卓也 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (90304766)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 燃料電池 / 電池材料 |
研究実績の概要 |
高温作動の固体酸化物形燃料電池(SOFC)では、炭化水素を改質器なしで供給を行う直接内部改質型の作動が原理的に可能であるが、従来のセル構成では、熱応力に対する脆弱性や炭素析出等の問題が生じ、長期耐久性は期待できない為、本研究にて機械的柔軟性および燃料多様性を向上させた、新しいコンセプトの燃料電池の創出を目指す。本年度は、無機繊維ネットワークからなるフレキシブル改質反応場を燃料極側に適用した柔軟性の高い“紙の燃料電池”の作製プロセスの確立を目標とした。 ジルコニアおよびセリア、アルミナを固溶させた酸化物粉末をスラリー化後、焼成プロセスにて厚さ約20μmの高靱性電解質シートを作製し、片面に燃料極(Ni-安定化ジルコニアサーメット)ペーストを、反対面には空気極ペーストをドット状に塗布して高温焼成することで機械的柔軟性をもつSOFCとし、さらに無機繊維ネットワーク内にNiを分散させたフレキシブル触媒反応場を積層して内部改質機能を付与し、新しいコンセプトのSOFCとした。 上記試作セルにドライ水素および混合ガス(CH4/CO2 = 1)を供給、800 oCにおいて発電試験を行ったところ(セルの柔軟性が失われないよう、セル周囲にシール材を用いないシールレスにて測定)、CH4/CO2供給時に水素と同等かそれを上回る出力が得られた。この結果は、供給したCH4とCO2が、アノード活性層近傍に配置されたフレキシブル改質反応場上で高い転化率でH2およびCOに変換され、純H2供給時に比較して、より効率良く電極反応に寄与するH2およびCOがドット燃料極に供給されたことを示す。発電試験後、アノード活性層及びフレキシブル改質反応場に炭素析出は見られず、電解質の亀裂も観察されず、良好な発電性能を得ることに成功した。 以上のように、ジルコニア系酸化物の機械的および電気化学的評価を通して、電解質として機能する柔軟性の高い酸化物シートが得られ、これに柔軟性が損なわないよう燃料極、空気極および改質反応場を適用するセル作製プロセスを確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
紙の燃料電池を試作し、その発電試験に成功したが、当コンセプトの導入により、炭化水素直接供給時の燃料電池の長期安定作動が期待できるため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、電解質としての機能が低下しないようジルコニアに固溶させるドーパントの種類と濃度の調整を行い、電解質の靱性をさらに高め、得られた高靱性電解質を上記プロセスに適用することにより、セルの柔軟性の向上を目指す。一方、燃料多様性の観点からは以下の取り組みを行う。無機繊維ネットワークからなるフレキシブル改質反応場には、紙抄きプロセスの際に、金属触媒のみならず様々な機能性酸化物を分散させて触媒機能を向上させることができる。分担者と連携して得られた酸化物担体表面上の炭化水素の原子・分子レベルの現象に関する知見をフレキシブル改質反応場の設計に活用するとともに、異なる“紙”の積層化により、炭化水素を直接供給した場合でも発電部にクリーンな合成ガスのみを供給可能な積層型改質反応場を創出し、当反応場を燃料極側に適用することで直接内部改質運転時の安定作動を実証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
触媒分析用の混合ガスを発注予定であったが、想定よりも消費量が抑えられたため、年度内の購入が必要とならなかった為(白鳥)
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次年度使用額の使用計画 |
触媒分析用の混合ガスおよび分析用の触媒、触媒分析装置用の消耗品の購入予定(白鳥)
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