研究課題/領域番号 |
25289251
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
山崎 倫昭 熊本大学, 先進マグネシウム国際研究センター, 准教授 (50343885)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | マグネシウム / 腐食防食 / ヘテロ組織 / 長周期積層構造相 |
研究概要 |
平成25年度は、Mg 合金組織の電気化学的均質性評価手法の確立と腐食メカニズムの解明とMg 合金組織の幾何学的不均質性が電気化学的均質性に与える影響の解明についての研究を行い、以下の結果を得た。 (1) Mg/LPSO 二相合金鋳造材を用いた電気化学的均質性評価手法の確立:Mg-Zn-希土類元素(RE)系合金の表面電位分布を走査ケルビンプローブフォース顕微鏡(SKPFM)法により調査し、構成相間の電位差と腐食挙動および電気化学的挙動の関係を明らかにした。特にMg-Zn-Gd-Al合金において、Al添加量によりLPSO相の電位が母相の電位に近づき、結果として耐食性が向上することが確認された。 (2) Mg/LPSO 二相合金鋳造材を用いた腐食メカニズムの解明: Mg-Zn-RE系合金鋳造材における局部腐食の発生箇所を特定した。SKPFMにより測定した母相とLPSO相の相関電位差が0.3Vを上回る場合に、LPSO相付近の母相が選択的に溶解する様子が見られ、SKPFM表面電位と腐食発生挙動の関係が明らかになりつつある。 (3) 皮膜のインピーダンス特性の調査のため、走査型電気化学顕微鏡に局所インピーダンス測定モードを追加した試作機(SECM-LEIS 試作機)の仕様を検討した結果、原子間力顕微鏡に広域スキャナを適用した局所インピーダンス測定装置の仕様を決定するに至った。 (4) Mg/LPSO 二相合金の成分設計とその電気化学的特性の評価:母相との電位差が小さい新規LPSO 相の探索を行い、Mg-Zn-Y系、Mg-Zn-Gd系合金において、LPSO相形成する新しい組成を見つけるとともに、それらの表面電位に関する情報を得た。また、これらLPSO相の相安定性についての基礎的知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) Mg/LPSO 二相合金鋳造材を用いた電気化学的均質性評価手法の確立が順調に進んでいる。Mg-Zn-希土類元素(RE)系合金の表面電位分布を走査ケルビンプローブフォース顕微鏡(SKPFM)法により調査し、構成相間の電位差と腐食挙動および電気化学的挙動の関係についての基礎的知見が蓄積されている。 (2) Mg/LPSO 二相合金鋳造材を用いた腐食メカニズムの解明が進んでいる。Mg-Zn-RE合金中の母相とLPSO相の相関電位差がSKPFM表面電位で0.3Vを上回る場合に、LPSO相付近の母相が選択的に溶解ことが明らかになり、ガルバニック腐食発生と相関電位の関係についての考察を進めている。 (3) 走査型電気化学顕微鏡に局所インピーダンス測定モードを追加したSECM-LEIS装置の仕様を決定するに至った。 (4) Mg/LPSO 二相合金の成分設計とその電気化学的特性の評価:母相との電位差が小さい新規LPSO 相の探索を行い、Mg-Zn-Y系、Mg-Zn-Gd系合金において、LPSO相形成する新しい組成を複数発見するに至っている。
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今後の研究の推進方策 |
(1) Mg 合金組織の電気化学的均質性評価手法の確立と腐食メカニズムの解明:H25 年度に引き続き、SKPFM による複相Mg 合金の表面電位分布測定を行ない、各構成相の表面電位と腐食電位の相関関係を調査する。対象合金をMg/LPSO 二相合金から、既存二相Mg 合金や新規二相Mg 合金へ拡げて調査することで実験結果の体系化を進める。 (2) Mg 合金組織の幾何学的不均質性が電気化学的均質性に与える影響の解明:結晶粒径、結晶方位分布、粒界性格などが表面電位分布に与える影響と腐食挙動に及ぼす影響を調査する。対象合金をMg/LPSO 二相合金から、既存二相Mg 合金や新規二相Mg 合金へ拡げて調査することで実験結果の体系化を進める。結晶塑性FEM 解析によって押出材の塑性歪み分布を明らかにし、電位分布にどのような影響を及ぼしているか、その相関関係を明らかにする。 (3) 幾何学的ヘテロ/電気化学的ホモ組織制御による高強度高耐食性Mg 合金設計指針の確立:合金設計とプロセス設計による電気化学的均質性制御方法の確立を目指す。母相との電位差の小さいLPSO 相を形成するMg 合金の探索をH25 年度に引き続き進めるとともに、母相との電位差が小さい化合物相を有する新規Mg 合金組成を探索する。機械的特性および耐食性に影響を及ぼす幾何学的パラメータを制御する加工熱処理プロセスを設計し、新規Mg 合金展伸材の開発を進める。 最終年度では、ナノ・マイクロスケールの電気化学的均質性制御する合金設計および、マイクロ・メゾスケールの幾何学的ヘテロ組織を保持しつつ電気化学的均質性を制御する加工熱処理プロセス設計の指針を示し、優れた機械的特性と耐食性を有するMg 合金展伸材の最適組成と最適塑性加工条件を提案したい。
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