研究課題/領域番号 |
25289253
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
三石 和貴 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他 (40354328)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 全固体2次電池 / 電子顕微鏡 |
研究実績の概要 |
現在広く用いられているリチウム(Li)系2次電池は、有機溶媒の代わりに固体電解質を用いた「2次電池の全固体化」が望まれている。 近年、固体電解質内部でのLiイオンの伝導度は向上してきたが、界面での伝導度は未だ低い。 この原因は、空間電荷層という半導体の空乏層に対応するものによるものと考えられているが、直接観察された例は少なくその理解には材料界面の電子顕微鏡による観察・分析が不可欠である。 本研究では提案者が開発した大気遮断ホルダーをピエゾ素子駆動による探針に組み合わせることで、実験を大幅に容易にする道具立てを実現し、それを用いて全固体2次電池材料の界面の空間電荷層の観察を行うことで、界面の伝導を妨げている原因の解明と、界面伝導度の向上に寄与することを目的に研究を行っている。 昨年までで、ピエゾ素子によって微動する探針2本を備え、さらに探針の位置合わせを容易にするためにマイクロメーターにより粗動するという独自のアイディアを盛り込んだTEM試料ホルダーを製作し、FIBによって作製された試料片に対して電圧を印加しつつ観察することが可能となった。この際、電子線ホログラフィーを用いて試料内の電位分布を計測し界面の空間電荷層の解明を行う予定であったが、試料厚さなどから明瞭な縞を得ることが一般に難しかったため、フレネル縞の影響を低減し位相の計測精度を上げる手法を検討した。 また、電子線ホログラフィーを行う際に、歪のない参照領域を得ることが一般に難しいため、バイプリズムを用いないインラインホログラフィー手法も併せて検討した。実験的には、FIB試料作製時のダメージ層によるリーク電流を低加速イオンミリングによって取り除く際の条件出しを行い、リーク電流を数ピコアンペア程度まで低減できる条件を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画を立案した際にH26年度までの目標とした、ピエゾ素子によって微動する探針2本を備えたTEM試料ホルダーを製作し、固体電解質に金属を蒸着した試料やバッファー層を付けた試料に対してその場電圧印加を行う事は、電流計測の際のリーク電流を低減する方策にも道筋が付き、ほぼ実現できているといえる。 電池の充放電プロファイル電位プロファイルを電子線ホログラフィー法によって取得することはまだできていないが、特にH26年度は解析手法の検討で大きく進展したため、来年度にこれを用いた進展が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で、道具立てとTEM試料作製手法・処理手順の確立はほぼ達成されており、今年度は当初の予定通り、実際に動作する電池の実動作中の電位プロファイルの変化とEELSによる元素マッピングからその振る舞いを明らかにするため、試料形状や、配線方法の最適化を行いつつ、実際の測定を行う。 両極の極板での電位変化を押さえることで電池全体の組成や構造の変化等が観察可能となり、電池の理解に大きく貢献することが期待される。正極材としてはLiCoO, LiMnO、固体電解質としてはLiLaTiO, LiPO, LiPON等を対象にし、その場観察を行う上での全個体電池構造の最適化も併せ行っていく。また、昨年度研究が進展したインラインホログラフィーについて、さらに研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
H25年度に製作した試料ホルダーの試料保持部分のデザインの改良を行っているが、その仕様検討に時間がかかったため、その分の予算が残っていた事と、H25年度購入物品の不活性ガス循環精製装置が当初予定価格よりも安く調達することが出来たため、その分の予算が浮いた事で、H26年度当初に前の年度からの繰り越しがあった。 これらを試料保持部のデザイン改造の自由度を増すために使用予定あったが、大きな改造をすることなく測定することが出来たため、その分の予算が浮いた。
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次年度使用額の使用計画 |
これまでの研究で、道具立てとTEM試料作製手法・処理手順の確立はほぼ達成されており、今年度は当初の予定通り、実際に動作する電池の実動作中の電位プロファイルの変化とEELSによる元素マッピングを行っていく予定であるが、この中で、その場観察を行う上での全個体電池構造の最適化も併せ行っていく予定であり、そのための試料調達に用いる計画である。
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