研究課題/領域番号 |
25289254
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
田口 哲志 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他 (70354264)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 医療用接着フィルム |
研究概要 |
疎水化アルカリ処理ゼラチン(hm-AlGltn)の合成は、AlGltnをdimethyl surfoxideに溶解し、窒素雰囲気下において、元のAlGltn中の全アミノ基に対して10、30、40 %が置換される条件で合成した。分子内のアミノ基の求核置換反応により、hexanoyl (Hx: C6)、decanoyl (Dec: C10)、 stearyl (Ste: C18) chlorideがAlGltnに導入され、導入率が約10、30、40 %のH xAlGltn、DecAlGltn、SteAlGltnが得られた。熱架橋後のhm-AlGltnフィルムを超純水に浸漬した後の含水率は、42%Hx導入AlGltn(t42HxAlGltn)が他のフィルムと比較して最も含水率が低かった。一方、水に対する接触角変化を評価した結果、t42HxAlGltnフィルム表面は、水濡れ性変化率がオリジナルAlGltnと同様に高いことが明らかとなった。一方、hm-AlGltnフィルムのブタ動脈外膜に対する接着性は、疎水基鎖長が短く、導入率が高いほど高い傾向があった。すなわち、t42HxAlGltnが最も高い接着強度を示すことが明らかとなった。また、接着強度測定後の組織界面をヘマトキシリン-エオジン染色した後に観察した結果、t42HxAlGltnとt38DecAlGltnのみがブタ動脈外膜上に残留しており、凝集破壊をしていることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
種々の疎水基鎖長および導入率を合成した疎水化アルカリ処理ゼラチン(hm-AlGltn)を調整し、フィルムへの成形と湿潤血管組織に対する接着性を評価した。その結果、疎水基鎖長が短く、導入率の高い条件(ヘキサノイル基、42%導入)において最大接着強度を示すことが明らかとなった。さらに生体組織-フィルム剥離界面の観察の結果から、フィルムの剥離は、凝集破壊によるものであることを明らかにするに至っており、当初の計画以上に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
対象となる湿潤組織を循環器系組織の血管で行ってきたが、消化器系組織の大腸に対しても評価を拡大する。さらに体内で適用後の組織浸潤・血管新生も見据えて疎水化ゼラチンを用いた多孔質フィルムの作成にも展開し、湿潤組織に対する接着性評価と疎水基および多孔質フィルムの気孔率との関係を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初エバポレーターを購入予定であったが、他からの調達が可能になった。また、1年を通して対応できる研究補助員の雇用を予定していたが、適任者が見つからなかったため、次年度使用額が生じた。 研究補助員を雇用し、研究を加速する予定である。
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