研究課題
アルカリ処理ゼラチン(AlGltn)分子中のアミノ基に対する各疎水基導入率が約30mol%の疎水化AlGltnについて検討を行った。(それぞれhexanoyl基32%導入AlGltn: 32HxAlGltn、decanoyl基24%導入AlGltn: 24DecAlGltn、stearyl基26%導入AlGltn: 26SteAlGltn)。1H-NMR測定により、疎水基の鎖長が長くなるほど、アルキル鎖に帰属される1.3ppmのピークが強く測定されることが分かった。また、FT-IR測定においては長鎖脂肪酸のC=Oに帰属される2357cm-1や脂肪酸とAlGltn分子のアミノ基の結合におけるC-Nに帰属される2332-2323cm-1のピークが各hm-AlGltnで強く見られたことから、各鎖長のhm-AlGltnが生成されたことが確認できた。次に、10wt%となるようにそれぞれAlGltn、32HxAlGltn、24DecAlGltn、26SteAlGltnをヘキサフルオロイソプロパノールに溶解した溶液2.5mLをキャスト後に静置することで疎水化AlGltnの膜を得た。得られた膜の水接触角を評価すると、26SteAlGltnはAlGltnよりも優位に高い値が得られたのに対し、24DecAlGltnはAlGltnとほとんど変化はなかった。一方、HxAlGltnは導入率にかかわらず接触角がAlGltnよりもわずかに低い値となった。従って、HxやDecなどの短鎖長の疎水基でAlGltnを疎水化した場合、水濡れ性はAlGltnとほぼ変わらないと考えられた。次に、得られた膜とブタ大腸組織表面との接着強度を比較した。32HxAlGltnの接着強度が他の膜と比較して優位に高く、剥離界面における組織上の膜の残存量も多かったことから、32HxAlGltnが湿潤組織と強固に接着することが明らかとなった。さらに、ブタ大腸表面上に導入率の異なるHxAlGltn平膜を接着させたのちに、生理食塩水流により加圧することで、耐圧強度(シーリング強度)を評価した。その結果、Hx基導入率が高いほど耐圧強度が高くなることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
種々の導入率と鎖長を有する疎水化ゼラチンを合成し、膜状に成形することでブタ大腸に対する接着性およびシーリング強度と材料組成の関係を明らかにしており、計画通りに進んでいると思われる。
ヘキサノイル基を導入したアルカリ処理ゼラチンフィルムは、湿潤状態にある大腸組織や血管組織に対して効果的に接着することを明らかにしている。その為、今後の研究においては、生体吸収性ポリエステルとの複合化/コーティングを継続しつつ、フィルムを多孔化することで毛細管現象等を利用した生体組織からの水分の吸収と接着を効果的に行う条件についても検討を行う。
当初予定していた装置購入が他の予算で購入できたため、初年度の残額が大きくなった。平成26年度はその残額を減らすことができた。
平成27年度は、最終年度となるため予算の執行をより計画的に行う予定である。
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 6件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (18件) (うち招待講演 4件)
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