文化財の知的情報とともに保存・修復の基礎知識を得る目的で、高松塚古墳、日本刀の鋼および絵画に使われる顔料の微細構造などの解明を行った。高松塚古墳材料では、赤色顔料が辰砂(HgS)と砂鉄の混合物、緑が塩基性炭酸銅{CuCO3(CuOH)2}、青が藍銅鉱、黄が黄土、表面の汚染物質は粘土系物質と酸化鉄ナノ粒子、金箔の純度が約97%、地の漆喰の微細なトンネル状の形状と生成機構などを明らかにした。日本刀では、刃のマルテンサイトの電子線後方散乱によるナノ構造の解析、たたら製鉄に由来する鋼中の非金属介在物の同定と結晶構造などを明らかにした。顔料では油絵具に含まれる発色粒子と添加物粒子の微細構造を分析した。
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