研究課題/領域番号 |
25289256
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
中村 貴宏 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (50400429)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 薄膜プロセス / パルスレーザー堆積法 / フェムト秒レーザー |
研究実績の概要 |
本研究ではパルスレーザー堆積法(PLD法)に冷凍ターゲットを対象とし,高ピークパルス特性をもつフェムト秒パルスレーザー光を集光することによって生じる高エネルギー励起種を薄膜合成に用いることで,デブリやフラグメントの発生を抑制しつつ通常の手法では作製が困難なデバイスグレードの立方晶窒化ホウ素(c-BN)薄膜の作製を試みるとともに,ダブルレーザーアブレーション法による薄膜中への異種原子ドープによって新市街発行デバイスの実現を目的に研究を遂行している.これまでの研究では常温常圧で液体の炭化水素化合物であるベンゼンやシクロヘキサンターゲットを冷凍した冷凍ターゲットを対象とすることでデブ率発生を抑制した高品質のDLC薄膜合成に成功し,レーザー照射条件によってDLC薄膜中のsp2/sp3割合が変化することを見出した.この知見をもとにベンゼンと同じ分子構造を有し,水素,炭素,窒素からなるボラジンを冷凍した冷凍ボラジンターゲットを用いた製膜実験を行ったところ,薄膜中に一部c-BNの存在が認められたものの,ボラジンがチャンバー内の水成分と反応することで分解しホウ酸が生じた.本年度はガス置換システムを新たに導入するとともにチャンバー内部を洗浄しやすいように改良するとともに,廃棄ポンプもターボ分子ポンプから油拡散ポンプへと変更した.これによって製膜時のボラジンターゲットの安定化に成功したが,製膜時のボラジンの分解反応によって生じるホウ酸の除去が課題となっている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
冷凍ボラジンターゲットを用いた製膜実験では,製膜チャンバーの大幅改良によりc-BN結晶の作製に成功しているが,ボラジンの分解反応によって生じるホウ酸の完全除去に至っていないため,当初の予定よりもやや遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
これまでは,冷凍ボラジンをターゲットとして用いてきたが,ボラジンの分解反応によって生じるホウ酸の完全除去が困難であることが明らかとなったため,従来の炭化水素化合物液体にホウ素を導入した混合ターゲットを用いることでまずは高品質BCN薄膜の合成を試みる.そののち,ホウ素の含有量を変化させることで形成される薄膜の構造ならびに特性を評価する.
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次年度使用額が生じた理由 |
ボラジンターゲットを用いた製膜の際にチャンバーを改良したことと,ホウ酸の完全除去が困難であったため若干の遅れが生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
ターゲットを変えた製膜と異種原子ドープ実験によって執行予定.
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