研究課題/領域番号 |
25289259
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
大竹 尚登 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (40213756)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 材料加工・処理 / 薄膜プロセス / アダマント薄膜 / コーティング / 炭窒化ホウ素 |
研究概要 |
黒鉛及び黒鉛とB4Cからなる原料固体ターゲットを真空アーク放電銃により蒸発・イオン化させ,イオンビームとして基板に照射する装置を試作し,アモルファス炭化ボロン膜の作製を試み,作製した膜に対してBoD 試験およびUV-VIS 測定を行い,機械的・電気的特性を評価した.その結果,以下のことがわかった。 GD-OES 分析により異なるバイアス電圧で作製したアモルファス炭化ボロン膜中にB原子が存在しており,各膜のB 原子に起因するピーク強度から,-100 V,-200 V,-400V,-300 V の順にB 含有量が少なくなっていることがわかった.また,ラマン分光分析により膜の構造分析を行った結果,基板へのバイアス電圧を変化させて作製したすべてのアモルファス炭化ボロン膜において,1525カイザーにG-bandピークが,1340カイザーにD-bandピークが存在し,膜中にアモルファス炭素膜と同様の構造を有していることがわかった.また,アモルファス炭素膜よりもアモルファス炭化ボロン膜において大きいId/Ig値を示すことがわかった. FT-IR分析により膜中の結合状態を分析した結果,基板へのバイアス電圧を変化させて作製したすべてのアモルファス炭化ボロン膜において1200 cm-1付近のB-C (st.)に起因するピークが存在することがわかった.また,2400 ~ 3600 cm-1の間にB-OH (st.)に起因するブロードなピークが確認された.さらにNEXAFS 分析によりバイアス電圧を変化させて作製したアモルファス炭素膜のsp2/(sp2+ sp3)比を算出した結果,バイアス電圧の増加と共に膜中のsp2/(sp2+ sp3)比が増加していることがわかった.-100Vのときに45%の高いsp3比の得られることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
黒鉛及び黒鉛とB4Cからなる原料固体ターゲットを真空アーク放電銃により蒸発・イオン化させ,イオンビームとして基板に照射する装置を試作し,アモルファス炭化ボロン膜の作製を行うことが出来た。さらに作製した膜に対してBoD 試験およびUV-VIS 測定を行い,機械的・電気的特性を評価して,膜の特性を明らかにすることが出来た。詳細は概要に記した通りであり,この点で研究は順調である。 さらに本研究では,主テーマと並行して特殊パルスを用いたマグネトロンスパッタによる炭窒化ホウ素の作製の研究を進めた。まず組成比の異なる3 つのターゲット(BC6,BC2,B4C) を用いてB/C 比の異なるa-BC 膜を合成し,その構造・組成分析及び機械的特性を評価した.BC6,BC2 及びB4C のターゲットを用いて合成した膜はそれぞれB/C = 0.3,1.0,4.0 の組成比を有し,B/C = 0.5,1.0 のa-BC 膜とB/C = 4.0 のa-BC 膜で異なる構造を有していることを明らかにした.また,膜中のB/C 比の増加に従って膜の硬さが上昇し,耐摩耗性は低下し,相手攻撃性が上昇することを明らかにした。 ついで組成比の異なる3つのターゲット(BC6,BC2,B4C) を用いて,真空容器内にN2ガスを導入することによりBCN 膜を合成し,その構造・組成分析及び機械的特性を評価した。合成したBCN 膜はN2 ガス流量の増加に従ってB/C 比が減少し,N/C 比が上昇することを明らかにした。また,膜中の窒素含有量の増加に従って炭素のsp3 結合やB-C 結合が減少することを示唆した。さらに,膜中の窒素含有量の増加に従って膜の硬さは減少し,耐摩耗性や相手攻撃性に変化が生まれることを明らかにし,ターゲットにB4C を用い,N2 を2 cm3/min 導入した条件下で硬さ15 GPa,μ=1.23 で高耐摩耗性を有するa-BCN 膜の得られることを明らかにした。 以上ことから,順調に進んでいると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
黒鉛及び黒鉛とB4Cからなる原料固体ターゲットを真空アーク放電銃により蒸発・イオン化させ,イオンビームとして基板に照射する装置を用いて,炭窒化ホウ素の合成にトライするとともに,イオンエネルギー制御型フィルタードカソーディックアーク法によるB, C, NからなるBCN膜中の結合を分析する機構を開発し組み込む.膜中にC=N, C-N, B-C,B-N-Bの結合がどの程度含まれているかを分析しつつ膜の窒化を援用するための方策を明らかにする。 以上の合成実験とin-situの赤外線時間分解分光スペクトル分析,イオン質量分析とを組み合わせたBC2N生成基礎過程の検討後,RBS-ERDA(ラザフォード後方散乱-弾性反跳分析)により膜の組成の定量化を,NEXAFS(吸収端近傍微細構造)により化学結合の定量化を,TEMにより微細構造を,XRR(X線反射率測定)により密度を測定して,“どのような生成過程でどのような構造の膜が得られるか,そしてどのような特性を有しているか”を明らかにする.
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次年度の研究費の使用計画 |
炭窒化ホウ素合成用の装置の高性能化を目指して改良を行うべく,次年度に向けて総合的に設計を行っている。装置改良分の支出について次年度に送ることとした。 炭窒化ホウ素合成用の装置の高性能化のために用いる。特に磁場援用部について制御系を高性能化する。
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