研究課題
基盤研究(B)
1.残留γ特性やMA特性などの組織制御技術の確立(1) 組織制御技術の確立:0.2%C-1.5%Si-1.5%Mn-1.0%Cr-0.2%Mo鋼の丸棒を試作し,γ化後にマルテンサイト変態終了温度以下のより高い温度で等温変態処理を施すことによって残留オーステナイト体積率を増加させ,かつその炭素濃度も高めることを見出した.(2) TM鋼の切欠き疲労強度の評価:上記の熱処理を施したTM鋼において,高い切欠き疲労限と低い切欠き感受性達成できた.しかし,母相組織をベイニテイックフェライトとマルテンサイトの混合組織としたTBF鋼に比較して,その切欠き感受性は少し高い傾向を示した.(3) TM鋼の低サイクル疲労挙動:TM鋼は,TBF鋼と同様に大きな疲労硬化挙動を生じた.この疲労硬化は主に,残留オーステナイトのひずみ誘起変態に起因した.なお,従来のマルテンサイト鋼は疲労軟化を生じた.2.TM鋼の表面改質技術の確立(1)微粒子ピーニングによる表面改質:残留オーステナイト量の少ないTM鋼では,TBF鋼に比較して微粒子ピーニングによる表面硬さの増加,圧縮残留応力の増加や疲労限の増加は小さかったが,従来マルテンサイト鋼に比較して効果は得られた.(2) 真空浸炭・微粒子ピーニングによる表面改質:真空浸炭によってTM鋼の表面層の残留オーステナイト体積率は40vol%まで増加した.これは,従来マルテンサイト鋼に比較して15vol%多かった.微粒子ピーニング後の硬さの増加や圧縮残留応力の増加も大きく現れた.これらの増加量はアークハイトを高めるほど増加した.
2: おおむね順調に進展している
①設備備品費で購入した「小野式回転曲げ疲労試験機」と平成25年度に試作依頼した「供試鋼」の一部が予定通り納品されたため.②組織観察,残留オーステナイト特性評価,残留応力測定,疲労試験などが順調に進んだため.③切欠き疲労強度の改善機構については,論文発表を急ぐため,回転曲げ疲労について,き裂の発生と伝播挙動を調査した.ねじり疲労試験については,予定通り,平成26年度に実施する予定である.
平成26年度では,平成25年度の研究成果を基にして,計画通り,以下の2つのサブテーマの研究を推進する予定である.(1) 切欠き疲労強度を向上させるための最適な「表面硬化処理技術の確立」:平成25年度では主にTM鋼の疲労強度に及ぼす「微粒子ピーニング」の影響を調査したが,一般の自動車部品にTM鋼を適用するためには疲労強度を極限まで高めるために,「真空浸炭」後に「微粒子ピーニング」を施す必要がある.平成26年度では疲労強度に及ぼす「真空浸炭+微粒子ピーニング」の効果を調査し,主に最適な微粒子ピーニング条件を明らかにしたい.(2) TM鋼の「切欠き疲労強度の改善機構の提案」:切欠き疲労強度の改善機構を検討するためには,疲労限の調査の他,き裂の発生・伝播挙動,及び組織因子との関係を詳細に調査する必要がある.本年度は,光学顕微鏡を用いたき裂の発生・伝播速度の測定のほか,EBSD解析によってき裂先端部の残留オーステナイトの変態挙動を調査し,MA相内に存在する残留オーステナイトと単独に存在する残留オーステナイトの役割を明らかにする.さらに研究を推進するため,平成25年度と平成26年度に得られた主要な結果を,国内の講演会および国際会議などの場で発表し,この分野の国内および国外の研究者との情報交換を進めたい.
当初計画していた供試鋼の試作の一部が翌年度に繰り越しとなったため,次年度使用額が生じた.また,EBSD解析の外注のための経費も繰り越した.(1) 学術研究助成基金助成金の残額:3,339,587円(2) 平成26年度使用予定額:①供試鋼の試作費:1,700,000円,②EBSD解析外注費:1,000,000円,③その他(試験片加工費など)600,000円
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (11件) (うち招待講演 1件)
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