研究課題/領域番号 |
25289263
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
小野 幸子 工学院大学, 工学部, 教授 (90052886)
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研究分担者 |
阿相 英孝 工学院大学, 工学部, 准教授 (80338277)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ナノ材料 / 先端機能デバイス / 半導体超微細化 / 材料加工・処理 / 国際情報交換 ドイツ |
研究概要 |
平成25年度は,GaAsを中心に申請者らが提案する構造制御技術の適用性を検討した。単結晶半導体の結晶方位に依存した異方的なエッチングの進行を利用し,規則的なメインパタンの中に自発的に生成する秩序構造(サブパターン)を共存させることができる。コロイド結晶(微粒子の二次元最密充填配置)を出発構造として,半導体基板上に最密充填配置のホールアレイやカラムアレイを作り分けることが可能であった。ここでは,n-GaAs(111)基板上にフォトリソグラフィーを用いて周期3ミクロンの開口部を持つレジスト製ハニカムマスクを作製後,化学エッチングによりプレピットを形成した。その後,位置選択的に電解エッチングを行うことで,一辺が約200 nm,深さ約70ミクロンの三角形状の孔が周期3ミクロンで規則的に配列したGaAsホールアレイを得た。さらに,GaAsホールアレイに対し,異方性エッチングを施すことで,一辺が約1.5ミクロンの三角柱状のピラーアレイを作製した。結晶異方性エッチングをさらに延長することで,先端がニードル状に尖った微小電極アレイを作製することが可能であり,真空中においてバルク基板では観察されない電子放出特性を確認した。また,マスクを介さないで直接GaAs基板をアノードエッチングすることで,自己組織化的に規則配列したGaAsナノワイヤアレイを形成し,GaAsピラーアレイよりも良好な電子放出特性を持つことを確認した。マスクレスナチュラルリソグラフィーとも呼べる本手法は,高密度にサイズの均一なナノワイヤを作製することができ,MBE選択成長技術などに比べプロセスの簡便さなどの点でも有効であることを実証した。また,アノード酸化の手法を用いたバルブ金属の自己規則化ナノポーラス酸化膜の作製に関しても,結晶化αアルミナメンブレンの物理的・化学的特性評価やチタニアナノチューブの誘電体薄膜への応用など,多大な進展を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究は当初の研究計画以上に順調に進展しており,GaAs以外にもInPやSiなど他の半導体あるいは金属材料において微細構造制御技術を体系的に確立しつつある。また,本研究を通じて得られた知見・技術は,国内外で開催される会議等で積極的に発表し,国内のみならず海外での国際会議における招待講演も数多かった。特に,GaAsの三角プリズム型ピラーアレーの形成は,過去に見出されたことのない形状を湿式プロセスを用いた異方性エッチングで得ているため,多大な注目を集め,またその発展形としてのナノワイヤー形成に関しても他分野からの応用研究への共同研究の依頼が集まっている。また,アノード酸化を用いたポーラス酸化皮膜のナノ構造制御に関しても基礎研究をエネルギー効率利用の分野に企業との共同研究により応用できた。学術論文としてもこれらの複数の成果を投稿・掲載しており,学会発表でも学生が数々の講演賞を受賞した。また,それだけに留まらず,先に述べたとおり実用化に向けた生産技術の開発を各専門企業との共同研究という形で展開し,新たな研究課題,用途を見出している。
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今後の研究の推進方策 |
(1)研究成果の公開・発表に対し必要なデータの収集を継続して行う。また,①作製条件の確立,②デバイス応用・物性測定,③プロセスの見直し・再設計の3要素のフィードバックを効率的に回すことで,早期に問題点・課題点を把握し,総合的な実験条件の修正・改善に努める。 (2)研究成果を整理し,汎用性のある作製・加工技術を積極的に活用した応用研究を展開する。 (3)本研究を通じて得られた知見・技術は,国内外で開催される会議等での発表,学術論文の投稿を鋭意進める。 (4)さらに,実用化に向けた生産技術の開発を電子デバイスなどの他分野の研究者,および各専門企業との共同研究を通じて積極的に展開する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当年度購入予定であった装置と同様のものを学内の他の部署で購入したことがわかり、それを借用することが可能になったため、本年度の購入を見送った。 26年度に改めて必要装置購入および試料解析の費用に充てる予定である。
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