研究課題/領域番号 |
25289266
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
大野 宗一 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30431331)
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研究分担者 |
澁田 靖 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90401124)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 凝固 / 偏析 / シミュレーション / 多元系合金 / デンドライト |
研究実績の概要 |
本研究は、合金凝固におけるミクロ偏析制御のための新しい方法を発展させることを目的とし、多元系合金の溶質拡散におけるタイライン・シフト現象を利用した新たな指導原理の発展に取り組んでいる。本年度は、分子動力学法(MD)による高温物性値の算出、前年度に発展させた定量的フェーズフィールドモデルに基づくタイライン・シフトとミクロ偏析挙動の関係性についての解析を実施した。 まず、MDによる高温物性値の算出においては、GPU並列計算による高速化を達成することで、数百万原子の凝固をシミュレートすることに成功し、さらに固相が四回の対称性を有する形態に成長することを示した。その形態の解析からフェーズフィールド・シミュレーションに必要な動力学係数を異方性を含めて算出するが可能になった。また、合金系を対象とした動力学係数の算出にも着手した。 フェーズフィールドモデルに基づく、タイライン・シフトとミクロ偏析挙動の解析においては、仮想的な三元系合金を対象とした偏析シミュレーションを実施した。液相中の拡散係数が大きなfast diffuserと拡散係数が小さいslow diffuserのミクロ偏析を対象に、拡散係数の差、冷却速度の違い、さらに界面形状(組織形態)の違いを考慮した系統的なシミュレーションを実施し、タイライン・シフトによってslow diffuserのミクロ偏析が低減することを明らかにした。さらに、slow diffuserの存在によって、固相の形態の複雑化が生じることで、ミクロ偏析がさらに低減することも明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、MDによる物性値の算出も予定通り進行することができた。さらに、タイライン・シフトがslow diffuserのミクロ偏析を低減することがフェーズフィールド・シミュレーションから明らかとなり、本研究の目的における最も重要な知見が得られた。つまり、タイライン・シフト現象に立脚したミクロ偏析制御が可能であることを支持する結果が得られた。したがって、概ね順調に進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
現在までは、主に仮想的な合金系を対象とした計算を実施してきたが、今後は、MDシミュレーションから算出した物性値を利用し、鉄基合金(Fe-C-Mn合金)を主な対象に、タイライン・シフトとミクロ偏析挙動との関係性をフェーズフィールドシミュレーションから明らかにする。 具体的には、タイライン・シフトに及ぼすslow diffuser(Mn)とfast diffuser(C)の平均組成の影響、冷却速度の影響、凝固形態の影響を系統的に調査する。タイライン・シフト量とslow diffuser(Mn)のミクロ偏析量との関係を整理し、その結果をもとに、ミクロ偏析制御の指針を得ることに注力する。 まずは、連続冷却中における平滑界面移動の計算からはじめ、等軸デンドライト成長に伴うミクロ偏析生成過程を詳細に解析する。 また、シミュレーション結果の妥当性を検証する目的で、Fe-C-Mn合金などを対象に凝固実験を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ワークステーションが当初の予定よりも低価格で購入することができたために、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度、成果保存用のハードディスクの購入によって、使用することを計画している。
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