研究課題/領域番号 |
25289270
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
稲富 裕光 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 准教授 (50249934)
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研究分担者 |
早川 泰弘 静岡大学, 電子工学研究所, 教授 (00115453)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 結晶工学 / 結晶成長 / 均一組成結晶 / InGaSb |
研究概要 |
平成25年度年度は、原料結晶の準備、強磁場用加熱炉の改造と動作確認、強い静磁場中でのInGaSb結晶成長実験、そして数値シミュレーションを実施した。 (1)Arivanandhan、早川は、原料と種結晶になるGaSb 結晶および溶液帯となるTeドープ InSb バルク結晶をチョクラルスキー法で育成した。 (2)稲富は、試料移動・回転機構を新たに製作して既有の強磁場用加熱炉に組み込み、さらにその加熱炉をJAXA既有の超伝導マグネット(最大6T、ボア径30cm)の内部に設置した。そして、InGaSb結晶の代わりに(Sb種結晶)/Bi/(Sb原料結晶)試料を用いた予備試験を通して6テスラの静磁場中で加熱炉一式が問題なく動作すること、そして強磁場中でも熱パルス法により成長結晶中に不純物縞を周期的に導入出来ることを確認した。 (3)稲富らは温度勾配徐冷法によるInGaSb結晶成長実験を実施した。成長結晶中の不純物縞は熱パルス印加時点での界面位置・形状に対応するため成長速度を求めることが可能である。その結果、浮力対流が強くされた条件では結晶界面形状の平坦性、また成長方向および半径方向の濃度均一性が向上することを明らかにした。そして、InGaSb結晶成長過程の数値シミュレーションを行った結果、成長界面でのカイネティクスが結晶界面形状の平坦化をもたらす可能性があることを明らかにした。従来の半導体結晶のバルク成長に関する研究では成長カイネティクスの影響を考慮されていなかったため、本研究では今後、成長カイネティクスの種結晶面方位依存性をも踏まえて成長界面形状および成長結晶中の濃度分布を考察する必要があるだろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
強磁場実験に向けた試料準備および装置開発、そして温度勾配徐冷法によるInGaSb成長実験が予定通り実施された。その結果、成長界面形態に及ぼすカイネティクスの影響を見出したことは本年度の大きな成果である。ただし、組成変動が小さいIn0.11Ga0.89Sb単結晶を再現良く育成するには至っていない。この問題解決のためには、平成26年度年前半に温度プロプログラムの更なる調整をしてかつ成長に最適な種結晶の面方位を決定する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度前半に強磁場実験を実施しつつ遠心機搭載装置の開発を行い、遠心機実験を実施する。平成27年度は強磁場印加と遠心機利用の実験結果を数値シミュレーションと比較する。更に、目標組成に応じてGaSb ないしInSb を種結晶として用いて種結晶と成長結晶の格子不整合を小さくし、幅広い目標組成領域での均一組成のInxGa1-xSb 単結晶育成を目指す。 上述の温度勾配徐冷法の開発は早川、Arivanandhan が既に取り組んでおり、強磁場利用 及び遠心機利用は稲富が熟知しているため、研究が進展しないという状況には至らないと考えている。想定される技術的困難とその対応は以下の通りである。種結晶をGaSb ないしInSb とした場合、成長層との格子不整合が大きいために多くの欠陥が入り、多結晶化する可能性がある。この場合は、本手法で育成した単結晶を新たな種結晶として次の成長実験に供するというサイクルを繰り返すことで、得られる組成を段階的に増加させる。
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