研究課題/領域番号 |
25289270
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
稲富 裕光 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 教授 (50249934)
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研究分担者 |
早川 泰弘 静岡大学, 電子工学研究所, 教授 (00115453)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 結晶工学 / 結晶成長 / 均一組成結晶 / InGaSb |
研究実績の概要 |
平成27年度は、強磁場中および遠心機上にて液相中の対流を抑制した条件でInxGa1-xSb結晶の育成を行った。その結果、以下の点を明らかにした。 1) In0.11Ga0.89Sb結晶成長ではIn0.03Ga0.97Sb結晶成長と同様に通常環境での育成に比べて種結晶からの成長量が増大した。そして、種結晶の結晶面方位が(111)Aおよび(111)Bのいずれの場合でも同様の傾向であった。この結果から、通常環境では原料結晶から溶解したGaSbの成長界面への輸送を対流が妨げるために成長速度が遅くなったと考えられる。 2) In0.11Ga0.89Sb結晶成長では、In0.03Ga0.97Sb結晶に比べて、強く対流を抑制してもなお多結晶化し易いことを明らかにした。そして、より高いIn組成での結晶成長の場合、この傾向は顕著になった。これは、In組成が高くなると成長温度が低くなり偏析係数が大きくなるので界面形状の不安定性が増すことが一因として考えられる。 3) InSb結晶を種結晶として組成xが1に近いInxGa1-xSb結晶成長を試みたが、2)と同様に多結晶化が見られた。 4) 成長量および原料結晶の溶解量は結晶面方位により異なること、原料結晶の界面形状はいずれもファセットを示すことを見出した。成長カイネティクス係数を一定値とした数値シミュレーションの結果は、実験により得た成長界面および溶解界面の形状とその時間変化をうまく再現しないことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の実施計画通り、強磁場実験および遠心機実験により幅広いIn組成での結晶成長実験を行い、かつ数値シミュレーションと実験結果の比較を行うことが出来た。そして、対流が抑制された条件で何故成長量が増大する原因を解明した。従って、当初の計画以上の成果を上げている。しかし、高いIn組成での高品質結晶育成技術の確立に向けて課題が残されている。
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今後の研究の推進方策 |
数値シミュレーションによる実験結果の再現性を高めるために、成長カイネティクス係数の面方位依存性に加えてステップ密度依存性、そして原料結晶の溶解界面においてもカイネティクス係数を考慮したモデルを検討する。また、高いIn組成での高品質結晶育成のためには液相濃度分布の時間変化を考慮する必要があると考えられるので、成長時の冷却速度をこれまでのように一定とせず時間変化させることにより成長界面前方で組成的過冷却を発生させない工夫をする。
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次年度使用額が生じた理由 |
超伝導マグネット用蓄冷剤など一部の消耗品の購入を他予算で工面するなど当初計画を効率的・効果的に進めた結果、直接経費を節約出来た。そのため、成果を最大化するためにより多くの条件での追加実験を行い、かつその成果を公開するための学会参加、論文投稿の必要が生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
超伝導マグネット用蓄冷材一式、原料およびBN製柑禍など物品購入費、また著名な学術雑誌の投稿費・別刷り代、学会発表のための旅費・参加登録費に充てる。
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