研究課題/領域番号 |
25289272
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
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研究分担者 |
佐藤 善之 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50243598)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | イオン液体 / セルロース / 物性実験 / 物性理論 / 水素化分解 |
研究概要 |
本年度の研究は,イオン液体を用いたセルロースの水素化分解による炭化水素合成実現に向け,主として「イオン液体によるセルロースの非晶質化における反応条件の緩和化」および「バイオマス可溶性イオン液体に対するCO2溶解度測定」を行った. まずセルロースの非晶質化に関しては,セルロース可溶性イオン液体として一般に良く使用される[bmim][Cl] (1-butyl-3-methylimidazolium chloride)に比べ低融点かつ低粘度なイオン液体である[Amim][Cl] (1-allyl-3-methylimidazolium chloride)を用い,研究目的の一つである非晶質化条件の緩和化(低温・短時間)を試みた.選定した実験条件の範囲内においては,低温・短時間でも従来と同程度の非晶質化を確認できたものの,高温・長時間の非晶質化条件においては,セルロースの重合度が反応初期に比べて約40 %にまで低下した.分解生成物が見られなかったことからセルロース構造そのものは維持されていると考えられ,セルロースの利用用途に応じた処理条件の選定が可能であるという有用な情報が示された.次年度以降に行う予定のセルロースの水素化分解の結果から,適切な処理条件の選定を行う必要がある. 次に,バイオマス可溶性イオン液体に対するCO2溶解度測定に関しては,上述の[Amim][Cl]と他2種のイオン液体を用い,磁気浮遊天秤にて温度50~100 °C,圧力18 MPaを上限とする実験条件で測定を行った.数多く存在するイオン液体種に対するCO2溶解度の推算体系構築は必要不可欠であるが,バイオマス可溶性イオン液体を含む極性イオン液体に対するCO2溶解度の推算はあまり行われていない.そこでPC-SAFT (Perturbed-Chain Statistical Associating Fluid Theory)状態式を用いた推算を試み,充分な推算精度を実現した.また,CO2存在下におけるイオン液体に対する水素溶解度の挙動に関しても,状態式を用いた計算により,CO2添加効果の定量的な把握に成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非晶質化条件の緩和化という目的に対しては,超音波振動装置の使用を行えなかった物の,従来と異なるイオン液体の選定により充分な程度の緩和化を実現できた.また,CO2添加によるイオン液体に対するH2溶解度の効果に関する定量的評価は,状態式を用いた数値的解析により実現できた.しかしながら,イオン液体-CO2混合系における粘度測定は行えておらず,これらのことからおおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
イオン液体による非晶質化のさらなる非晶質化条件緩和を目的とし,超音波振動装置を使用する試験を行うとともに,異なるイオン液体種を用いた際の重合度変化を定量的に評価するべく,ソルバトクロミズムを用いたイオン液体の極性評価を行う.また,実際に水素化分解試験を行い,炭化水素の収率から最適な前処理条件の選定を行う.CO2溶解度に関しては,H2単独の溶解度の知見も極めて限られていることから,H2溶解度の測定を優先的に行うと共に,CO2+H2溶解度の測定が行えるような装置設計および実際に測定を行う予定である.得られた実験値を元に,多様なイオン液体種に適用可能な溶解度推算体系の構築を試みる.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は,今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額である. 平成26年度請求額と合わせ,平成26年度の研究遂行に使用する予定である.
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