本研究では、金属-混合伝導性酸化物界面での反応場形成機構と反応特性の向上について解明を進めることを目的とした。本年度は、混合伝導体としてパイロクア型結晶構造を持つTi系の複合酸化物を検討した。パイロクロア酸化物は一般組成式A2B2O7で表され、結晶構造中に酸素欠陥をもつため酸化物イオン伝導性を示し、別の金属元素を添加することで酸化物イオン伝導性や電子伝導性が向上する。パイロクロア酸化物として (Gd0.9Ca0.1)2Ti2O7-δ(以下、GCT)、Gd2(Ti0.8Ru0.2)2O7-δ(以下、GTR)、(Sm0.9Ca0.1)2Ti2O7-δ(以下、SCT)、および (Y0.9Ca0.1)2Ti2O7-δを調製し、ニッケルとのサーメット多孔質電極とすることで燃料極とした。また、これらの多孔質電極に加えて、パターン電極を作製し三相界面(TPB)における反応過電圧について検討した。パターン電極で反応過電圧を評価したところ、GCT、GTR、SCTを用いた場合、標準的な酸化物イオン伝導体であるイットリア安定化ジルコニア(YSZ)を用いた燃料極よりも過電圧が小さく、性能が良かったことから、これらを用いて多孔質電極とし、発電特性を評価した。液相法で調製した混合伝導体を用いて多孔質電極としたところ、電極内のガス拡散に起因する過電圧が著しく大きくなったため、固相法により粒径の大きな試料を調製した。この結果、固相法による混合伝導体を用いた多孔質電極では、ガス拡散に起因する過電圧を大きく低減することができ、大きく性能が向上した。また、混合伝導体を用いた燃料極の新たな適用として、CO2によるメタンの直接改質発電を検討した。平成25年度に検討したSDC(サマリウム添加セリア)を用いた燃料極は、従来のYSZを用いた電極に比べて、CO2直接改質発電における安定性が向上することが示された。
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