高温で燃料やゴミなどを焼成する焼成炉からは多量のNOxが排出される.このNOxはNH3を還元剤として用いた脱硝反応(アンモニア脱硝,4NO + 4NH3 + O2 → 4N2 + 6H2O)により無害なN2へ還元除去される.これまでに,我々はTiO2 光触媒上でアンモニア脱硝が常温常圧の温和な条件下で進行することを報告した.しかし,TiO2は可視光( >400 nm)を吸収することができないため,これ以上の活性の向上は難しいと考えられる.本研究においては,吸収波長の拡大を目指して,TiO2への各種の色素の修飾を検討してきた.平成27年度においては,これまで見いだしていたポルフィリン色素より,Ruを含むN3色素が高い活性を示すことを見いだした.N3色素修飾TiO2光触媒は,可視光照射下で,実用的な排ガス浄化触媒を上回るNOx分解活性を示した.TiO2ではなくSiO2を用いた場合では反応が全く進行しなかったため,N3色素は単独で機能するのではなく,光励起されたN3色素からTiO2への電子注入を介して反応が進行すると考えられる.また,吸着種の反応性の検討によって,本反応では触媒上に吸着したNOx種とNH3種がLangmuir-Hinshelwood型で反応し,N2が生成すると結論した.In situ DRIFTによる検討の結果,本触媒上では,NO/O2流通下で,NO2-種が生成し,さらにO2流通下で可視光照射すると,生成したNO2-種が酸化され,NO3-種が生成することがわかった.さらにNO2-種とNO3-種の反応性を詳しく解析し,本反応の反応中間体はNO2-種であると結論した.
|