研究課題/領域番号 |
25289291
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
福田 淳二 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80431675)
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研究分担者 |
王 碧昭 筑波大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (80261775)
渡邉 昌俊 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90273383)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 細胞シート / 電気化学細胞脱離 / 血管内皮細胞 |
研究実績の概要 |
これまでに設計した表面を用いて細胞シートの脱離・積層化をおこなった。脱離時間は、細胞シートのサイズが大きくなるほど長くなる傾向がこれまでに確認されていた。ヒト臨床では、数cmサイズまで大きくなることが予想される(表面積約10~20倍)。脱離時間が延長する原因は、細胞シート自体が電気的な抵抗となり、細胞シート底面全体への均一な電位印加が妨げられるためと考えられる。そこで、多孔質メンブレンに金薄膜をコートし、培養面として使用した。これにより直径約2cmの細胞シートが10分以内に脱離可能であることを示した。さらに、培養中に酸素なども底面から供給されるため、より厚みのある細胞シートが形成された。さらに、この手法を用いて、線維芽細胞のシート内に血管内皮細胞を導入したところ、細胞シート内に毛細血管網を形成する様子が観察された。この毛細血管網を有する細胞シートは、種々の成長因子などの高い機能を発現することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に記載した計画通りに、大きな細胞シートを脱離させるための多孔質メンブランを利用する方法を確立した。そして、多孔質メンブラン上では厚みのある細胞シートが形成され、5回程度脱離・積層化の操作をするだけで、ピンセットで作業できるほどの厚みのある細胞シートができることを示すことができた。これは、この方法を使って移植用の細胞シートを準備することが可能であることを示している。また、厚みのある細胞シートでは、酸素や栄養素の供給がどうしても問題となるが、これに対して血管内皮細胞を細胞シート内に組み込むことで血管ネットワークを形成できることを示し、より厚みのある細胞シートの作製への可能性を示した。今後より詳細に解析し、従来の拡散のみによる酸素供給ではなく、血管ネットワークに培養液を送液することでより厚みのある細胞シートの作製方法、さらにその移植方法を構築する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
1)血管網を有する三次元細胞組織体の構築 血管構造の構築は、再生医療分野においてブレークスルーが必要な重要な課題の一つである。本研究で構築する細胞シートの積層化のみでは、酸素枯渇のため1 cm角の肝組織という目標には届かない。そこで、細胞脱離技術を金ロッドへ応用し、細胞組織内への血管構造を導入する。 2)細胞組織の小動物移植実験 脱離に使用するオリゴペプチドは、本原理では細胞シート側に混入すると考えられる。例えペプチドであっても、生体内で悪影響がないことを証明する必要がある。本研究では、研究分担者らによる医学的な助言のもとで、ペプチド溶液または細胞シートをラット腹腔内に移植し、炎症反応や生着状態を評価する。次に、積層化した肝細胞シート、または非実質細胞(線維芽細胞や内皮細胞)とサンドイッチした細胞シートを、部分肝切除肝不全ラットモデルに移植し、血中アンモニア濃度の変化など、治療効果を評価することで本手法の有用性を示す。
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