各種造血系疾患の治療に用いられる血小板製剤は献血により供給されているが,保存が困難であり,献血者数の減少に伴う慢性的な不足からin vitro血小板生産系の確立が望まれている.血小板は,造血幹細胞から誘導される巨核球から産生されるが,造血幹細胞は骨髄中の有核細胞に1000万分の1程度しか存在しない希少細胞であり,in vitro血小板生産のソースとしては成り立たない.本研究では,優れた増殖能を持つヒト培養細胞株CHRFからのin vitro血小板産生プロセスの確立を目指す.血小板機能として,最も重要な止血効果は血小板同士の凝集反応が基になるが,CHRF細胞由来の血小板様体には,凝集機構が確認されない.本研究では,遺伝子解析による原因の解明を行い,細胞株からの機能性血小板生産プロセスの開発を目指す. CHRF細胞が産生する血小板様体の機能性評価を行ったところ,凝集機構が引き起こされない原因が,GP1B遺伝子の発現不良にあることを突き止めた.そこで血小板としての機能性付与のために, pcDNA3ベクターに対してGP1B遺伝子のクローニングを行い,遺伝子改変によりCHRF株のGP1B遺伝子発現を強化した安定株の作製に成功した.得られた細胞株に対して,産生した血小板様体の機能性評価を行った結果,mRNA発現量は500倍まで増加したものの,GP1Bタンパク質の発現は確認できなかった.そこで,血小板様体の産生量は少ないがGP1Bタンパク質の発現が確認されているMeg01細胞に対象を変更し,検討を行った.まずは,Meg01細胞の巨核球分化誘導剤であるバルプロ酸の濃度依存性について検討したところ,3 mMで最も高倍数性細胞の割合や表面マーカー陽性細胞が増加することが明らかとなった.続いて,産生した血小板様体の評価を行ったが,CHRF由来と同様にGP1Bタンパク質の発現は確認できなかった.
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