研究課題/領域番号 |
25289298
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
土居 信英 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (50327673)
|
研究分担者 |
柳川 弘志 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (40327672)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 蛋白質 / 進化 / バイオテクノロジー / がん / 免疫学 |
研究概要 |
まず、FcγRIIaおよびFcγRIIIaの細胞外ドメイン(以下ecFcγRIIaおよびecFcγRIIIa)にストレプトアビジンビーズに固定するためのビオチン様タグを融合したベイトタンパク質をCHO-S細胞を用いて発現・精製し、ELISAにより、どちらもIgGとの結合活性を有することを確認した。次に、16アミノ酸残基のランダムペプチドライブラリー、および、Fc受容体と相互作用することが知られている既知のアミノ酸を保存した部分ランダムライブラリーを設計し、ビーズに固定したecFcγRIIaおよびecFcγRIIIaに対して、mRNAディスプレイ法による5ラウンドのセレクションを行った。その結果、当初はビーズ表面のストレプトアビジンに結合する配列が優先的に得られたが、そのような偽陽性配列を排除するセレクションの条件を検討した結果、最終的にFc受容体結合ペプチドの候補配列を複数得ることができた。 一方、二重特異性抗体の試験管内進化では、タンデムscFvやDiabodyの効率的な試験管内選択に向けて、まず、mRNAディスプレイ法およびDNAディスプレイ法の改良を行った。これまでタンパク質のmRNAディスプレイでは小麦胚芽由来の無細胞翻訳系を利用していたが、よりRNaseが少なく、抗体の合成に適したPUREシステムをmRNAディスプレイ法に適用した。これまでPUREシステムは短いペプチドのmRNAディスプレイには適用可能であったが、それよりも大きなタンパク質では、mRNAとタンパク質の連結効率が著しく低かった。今回その原因を特定し、scFvの連結効率を向上することに成功した。また、従来のFabのDNAディスプレイでは非共有結合を介してタンパク質とDNAを連結してきたが、本研究では、共有結合を利用して連結する方法についても検討し、Diabodyと同じ二量体のFab抗体の試験管内選択系を確立した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究実施計画の目標を概ね達成することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
Fc受容体結合ペプチドの試験管内選択では、前年度に得られた候補ペプチドをEGFPに融合したタンパク質を大腸菌で大量発現し、Hisタグなどのアフィニティー・タグを利用して精製する。その後、表面プラズモン共鳴法などの手法を用いて、Fc受容体に対する親和性を評価する。 二重特異性抗体の試験管内進化では、前年度に確立した共有結合型DNAディスプレイ法を用いて実際にDiabodyの試験管内進化を行う。まず、既に論文・特許で公開されている配列情報を元に自己免疫疾患の標的であるサイトカインまたはその受容体に対する抗体の遺伝子DNAを合成する。次に、2種類の抗体遺伝子を組み合わせ、さらにランダム変異を導入したDiabodyライブラリーを作製し、DNAディスプレイ法による試験管内進化を行う。このとき、標的とする2種類の抗原を個別に固定した2種類のビーズを段階的に用いて、両者に結合する抗体を選択する。得られた二重特異性抗体について、大腸菌またはCHO細胞などの培養細胞における大量発現を行い、HisタグやFLAGなどのアフィニティー・タグを利用して精製する。その後、ELISA、ウェスタンブロッティング、表面プラズモン共鳴法などの手法を用いて、抗体の親和性・特異性・安定性などの特性評価を行う。これらの特性が不十分と評価された場合、さらに、抗体遺伝子に変異を導入したライブラリーを作製し、共有結合型DNAディスプレイ法による試験管内進化を継続する。
|