研究課題
Fc受容体結合ペプチドの試験管内選択では、前年度にFcγRIIaおよびFcγRIIIaの細胞外ドメイン(以下ecFcγRIIaおよびecFcγRIIIa)をベイトタンパク質として、16アミノ酸残基のランダムペプチドライブラリーの中から、mRNAディスプレイ法による5ラウンドのセレクションにより得られたFc受容体結合ペプチドの候補配列について検証を行った。まず、得られた候補ペプチドをEGFPに融合したタンパク質を大腸菌で大量発現し、Hisタグを利用して精製した。その後、表面プラズモン共鳴法(SPR)により親和性を評価したところ、新規のecFcγRIIa結合ペプチドを同定することができた。また、その結合の解離定数は3.9 μMであった。二重特異性抗体の試験管内進化では、まず、モデルとなる2種類の抗原に対する抗体遺伝子を組み合わせたDiabody型およびタンデムscFv型のフォーマットの二重特異性抗体を作製し、それらの機能を確認したところ、Diabody型では結合能が維持されていたが、タンデムscFv型では結合が確認できなかった。そこで、前年度に確立した共有結合型DNAディスプレイ法を用いてDiabodyの試験管内進化を行うこととし、実際に、モデル抗原を用いたDiabody遺伝子の試験管内選択の条件検討を行い、目的遺伝子が濃縮される条件を決定した。そこで、次に、既に論文・特許で公開されている配列情報を元に自己免疫疾患の標的である2種類のサイトカインおよびそれらに対する抗体の遺伝子DNAを合成し、ベイトとなるサイトカインの大量調製およびDiabody型遺伝子の構築を行なった。
2: おおむね順調に進展している
研究実施計画の目標を概ね達成することができた。
まず、二重特異性抗体の試験管内進化では、前年度までに確立した共有結合型DNAディスプレイ法を用いて、実際に自己免疫疾患の標的である2種類のサイトカインに対するDiabodyの試験管内進化を行う。ベイトタンパク質の発現では、前年度までに、大腸菌、動物細胞および植物細胞を用いて検討したが、選択実験に十分な発現量が得られなかったことから、今後は、ブレビバチルスを用いた発現系の検討を行う。その後、前年度に構築したDiabody遺伝子にランダム変異を導入したライブラリーを作製し、DNAディスプレイ法による試験管内進化を行う。このとき、標的とする2種類のサイトカインを個別に固定した2種類のビーズを段階的に用いて、両者に結合する抗体を選択する。得られた二重特異性抗体について、大腸菌またはCHO細胞などの培養細胞における大量発現を行い、HisタグやFLAGなどのアフィニティー・タグを利用して精製する。その後、ELISA、ウェスタンブロッティング、表面プラズモン共鳴法などの手法を用いて、抗体の親和性・特異性・安定性などの特性評価を行う。また、PURE mRNAディスプレイ法および共有結合型Bicistronic DNAディスプレイ法の応用として、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)に対するアゴニスト抗体および超耐熱性抗体の試験管内選択についても検討する。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件)
PLoS ONE
巻: 9 ページ: e109163
10.1371/journal.pone.0109163