研究課題/領域番号 |
25289305
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
古谷 寛 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (00190166)
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研究分担者 |
坂本 啓 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (40516001)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 宇宙システム / 展開構造 / 展開ブーム / 膜構造 / 超小型衛星 |
研究実績の概要 |
本研究で構築するブーム・膜複合構造の大きな特徴は,他のブーム展張式膜構造の提案ではブーム先端でのみ膜と結合せざるをえないのに対し,ブーム・膜を連続的または多点で結合できる構造様式を導入できる点である.この新たな「ブーム・膜複合展開構造」に用いる機構開発のため,初年度では先ず1.4mX1.4mサイズの展開膜構造試験モデルの試作を行った.これらの結果を踏まえて,2年度は前年度に製作したブーム・膜複合構造ならびに1.7mX1.7mサイズのスケールアップした展開膜構造試験モデルに対し,展開ダイナミクスを高速度カメラと画像解析ソフトを用いてブーム・膜複合構造の展開挙動を定量的に取得し,その特性の検討を行った.また,デオービット膜を想定してブーム径を小さくし,フライトモデルを想定したサイズでのブーム・膜複合構造の実現について,膜の折畳み方法と展開膜の構成を検討し,その実現可能性を明らかにした.本年度は,昨年度のモデルを用いた地上実験を更に推し進め,機能モデルの検討を行うとともに,超小型衛星用高機能膜として,実証実験を行うために,航空機実験による微小重力展開実験を実施し,その詳細な挙動ならびにフライトモデル製作のための具体的な知見を取得した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ブーム・膜複合構造を高収納率で実現できることを,40mm径ブームならびに13mm径ブームを用いた1.4mx1.4mならびに1.7mx1.7mサイズの展開膜構造を試作することを通して実証してきたことを踏まえて,1mx1mのブーム・膜複合展開構造を超小型人工衛星に搭載する際に必要な,ブームの収納時の収納癖の問題の重要性を明らかにすることができた.また,地上展開試験に必要な,新たな重力補償装置の提案を行うことができた.更に,航空機実験による微小重力環境での展開特性を取得することを通して,地上試験での展開特性の妥当性ならびに問題点を明らかにすることができた.
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究で,ブーム・膜展開構造の機能モデルを製作するのに必要な物理データを取得することができ,概念モデルを製作することができたため,当初本研究課題で予定していた主たる課題を達成することができた.年度末に微小重力実験を実施したため,成果の報告について今後学会等に発表していく予定である.また,これまでの研究成果を踏まえて,今後は,実際のフライトモデルの製作を行うとともに,実証衛星として既にJAXAの革新衛星プログラムとして申請しているプロジェクトに反映し,実証実験を実施する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究課題対象である「ブーム・膜複合構造物」の微小重力環境航空機実験による展開試験を実施する機会を得,超小型衛星を想定した環境試験モデルを用いた展開膜構造の展開挙動に関する極めて重要な実験データを得ることができた.しかし,実施時期が当初の予定より4ヵ月遅れて年度末になってしまい,実験で得られた研究成果を十分評価し,機能モデル製作に反映することができなかった.また,学会等で成果発表するまでには至らなかったため.
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次年度使用額の使用計画 |
超小型衛星に本研究で提案するブーム・膜複合構造を搭載し実証実験を行う機会を得たため,これまでの成果を踏まえて機能試験モデルの設計製作を行うとともに,研究成果をまとめて学会等で発表する.
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