研究課題/領域番号 |
25289306
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
矢代 茂樹 静岡大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00452681)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 複合材料・物性 / 航空宇宙工学 / 高速衝撃 / 解析・評価 / 粒子法 |
研究概要 |
実験面,解析面ともに,CFRP積層板のバードストライクによる損傷をモデリングするための基礎を確立することを平成25年度の目的とした。 まず,CFRP積層板に対する柔軟体の高速衝撃試験を実施した。複数の衝撃速度で試験を行ったが,超音波CスキャンやX線探傷装置で観察しても無損傷または固定端での曲げによる破断という結果になった。これは積層板の板厚が小さすぎたためであり,柔軟体衝撃損傷を把握するためには,試験片の寸法や固定の方法を変更する必要があることがわかった。 次に,Smoothed Particle Hydrodynamics (SPH)による粒子法シミュレーションの計算効率の改善を行った。計算点である粒子を物理座標系において不均一に初期配置し,これを等間隔とする一般化座標系へ座標変換して解析する手法を確立した。本手法を用いて等方性板の静的曲げや円孔近傍の応力集中問題を解析し,理論解と一致することを確認した。 また,写像を利用した解析手順に加え,写像後の計算空間への状態方程式の適用や,SPHで高速衝撃問題に必要な人口粘性の式を開発し,改善手法に組み込むことで,高速衝撃シミュレーションを構築した。本手法を用いて鋼球のアルミニウム板への高速衝撃問題を解析した。解析結果は,写像のスケールに依存せず実験結果とほぼ一致し,本手法の妥当性を示した。さらに,本手法により少ない粒子数で大モデルの高速衝撃問題を解析可能となり,粒子数の1.224乗で計算効率の改善を達成した。 さらに,改善したSPHにおいて,報告されている柔軟体構成則を飛翔体に適用し,柔軟体の剛体壁への高速衝突解析を実施した。解析で得られた最大圧力は,報告されている実験結果と概ね一致した。また,圧力の時間応答は写像のスケールに依存せず一致し,解析手法の妥当性を実証した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
柔軟体衝突試験で,平成25年度では無損傷または固定端破壊しか起こらず,CFRP積層板に発生する損傷の形態を把握できなかった。また,粒子法での損傷の表現方法として,従来手法である粒子の剛性を低下させる手法で損傷を表現したが,どの程度正確に柔軟体衝突損傷の形態を予測できるかを検証できていない。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度以降には,実験,解析ともに平成25年度に判明した改善点に対処し,CFRP積層板へのバードストライクによる損傷をモデリングする。具体的に,以下の3点に重点的に取り組む。 【CFRP積層板の柔軟体衝突試験】複数の積層構成のCFRP積層板にゼラチンを高速衝突させる。特に,平成25年度より試験片の板厚と固定条件を変更し,固定端以外に損傷が発生しないか確認する。衝突点破壊が起これば損傷形態データベースを蓄積し,柔軟体衝撃損傷の特徴を抽出してモデリングする。また,複数エネルギーでの衝突の結果から,柔軟体の衝撃による破壊メカニズムを推定する。 【粒子法における損傷モデルの検証と改善】粒子法での損傷の表現方法として,粒子の剛性と保持している応力を低下させることによって損傷を表現する。この方法で,CFRP積層板への鋼球の高速衝撃問題など,すでに所有している実験結果と比較し,損傷モデルの妥当性を検証する。また,粒子間の粒子間の結合を切ることによるき裂発生の不安定化の回避を試みる。 【柔軟体衝突シミュレーション】異なる衝撃エネルギーの解析を実施して3次元的な応力の伝搬と損傷進展挙動を把握する。実験結果から得られる損傷形態モデルと応力の伝搬挙動などの解析結果を照らし合わせ,CFRP積層板の柔軟体衝突損傷メカニズムを解明する。また,材料特性や積層構成による損傷進展挙動の違いを解析的に調べ,バードストライク損傷を支配する材料パラメータを特定し,耐柔軟体衝撃性能に関して考察する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に導入した超音波水浸探傷システムに計画より若干多額の経費がかかり,予定していた解析結果描画装置の導入を見送ったことが主な理由である。また,解析手法の構築に時間を要し,連携研究者のもとへ出張して行う実験の回数が少なかった。 平成25年度に実施できなかった連携研究者のもとでの実験(出張)を,平成26年度に行う。
|