研究課題/領域番号 |
25289311
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
八田 博志 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 教授 (90095638)
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研究分担者 |
山田 哲哉 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 准教授 (10280554)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アブレーション冷却 / アブレーション材料 / 高温劣化 / CFRP |
研究概要 |
アークプラズマ風洞試験では、損傷プロセスを理解することは容易ではない。また、アブレータは複雑なミクロ組織をもつため、損傷や変形の機構を明らかにするのは困難である。これらの困難を克服するために、実験が容易な一様温度に近い準静的加熱場と簡素なミクロ組織をもつ材料に着目し、降温時における損傷と変形の進行をそれらのメカニズムに遡って理解し、この損傷過程の理解を基礎に、アークプラズマ風洞試験中に材料の損傷や変形がどのように進むかを明らかにした。 まず、準静的加熱場におけるアブレーション材料の損傷と変形を観察し、アブレータ内に分散するボイドの大きさによって、別種の亀裂を発生しながら変形することを明らかにした。小さなボイドを含む材料では、繊維束が座屈をおこし膨張し、大きなボイドを含む材料では小さな応力でマトリックス中に亀裂を進展させ、この亀裂により応力緩和を起こすことにより座屈を抑制して収縮することを明らかにした。 続いて、小さなボイドを含むアブレータに限定してアーク風洞試験後の材料を観察し、アーク風洞試験と準静的加熱場における損傷及び変形の違いを明らかにし、急速加熱場における劣化及び変形要因を特定した。主たる結論は二つで、第一の結論は、アーク風洞試験では、準静的加熱場で発生した損傷に加えて層間剥離を多数発生させるため膨張変形が大きくなることで、第二は、マトリックの炭化反応温度が、準静的加熱場に比べて顕著に高くなることであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、平成25年度には、準静的加熱場におけるアブレーターの高温劣化挙動を観察し、劣化挙動の発生機構を明らかにすることを計画していた。平成25年度にはこの検討項目をほぼ完了することに加えて、アークプラズマ風洞を使った予備実験を実施し、準静的加熱場とアークプラズマ風洞環境におけるアブレーターの高温劣化挙動の相違を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度以降では、様々な条件下においてアークプラズマ風洞実験を実施し、衝撃圧や加熱率の効果を定量的に明らかにする。また、熱劣化過程で発生する損傷をモデル化し、本研究の成果を定量的な数値計算モデルに反映させる。
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次年度の研究費の使用計画 |
Stuttgart大学のプラズマアーク風洞を使用し、使用条件に近い環境下におけるアブレータの耐熱特性を評価する実験を行った。この実験は、Stuttgart大学の都合(装置の安全性審査)で大幅に遅れ、実験項目を減らさざるを得ない状況になり、支払いは年度末にずれ込んだ。項目を減らすことにより支払金額に余裕ができたこと、また近年の為替変動の急激な変化に対応するためには、使用料金の支払いに余裕を持たせる必要があり384,630円の残金が生じた。 上記の理由により、できなかった実験は次年度に実行すべく計画している。
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