研究課題/領域番号 |
25289315
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
日野 孝則 横浜国立大学, 工学研究院, 教授 (60373429)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 計算流体力学 / 船舶流体力学 / マルチスケール |
研究概要 |
船舶流体力学におけるマルチスケールシミュレーションの概念を確立するために、船体まわりの流れについて、関連する流体現象とその現象の長さスケールと時間スケールを整理した。これによってシミュレーションにおけるスケールレンジの設定が可能となった。 さらに、これらのスケールレンジをカバーするための、マルチスケールシミュレーション基盤技術として、平成25年度は長さスケールに対応した空間領域の分割方法を開発した。長さスケールの異なる領域毎に格子ブロックを生成するので、マルチブロック格子法を適用することになる。また、格子の大きさが領域毎に異なることを想定するので、ブロック間のインターフェースでは、格子点の共有を仮定せず、格子を重ね合わせて、互いに変数を補間することにより、格子ブロック間の情報交換を行う。 この補間において、格子ブロック間で格子サイズの著しい不均衡があると、計算精度が損なわれることが判明したので、格子ブロックの重なり合う場所では、大きな長さスケールに対応する粗い格子のブロックでは、ブロック境界付近で、格子を局所的に細かくする、局所細密化を行うことにした。この細密化によって、格子間の補間を精度良く行うことができることを確認した。さらにこの細密化を自動的に行うアルゴリズムを開発し、マルチブロック格子生成の労力を大きく低減することができた。 いくつかの計算例によって、領域分割法を用いた空間マルチスケールの取扱いにおける要素技術の確立を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、船舶流体力学におけるマルチスケール現象の解析のための数値シミュレーション技術の開発である。流体現象のスケールは、長さスケールに関わるものと時間スケールに関わるものの2つがあるので、マルチスケール解析もその両者に対応する必要がある。 研究計画では、初年度において長さスケールにおけるマルチスケール解析の要素技術を開発することとしている。また、次年度は時間スケールの扱いを検討して新たな時間振興スキームを開発し、最終年度において、時間スケールと空間スケールの解析法の統合を行い、シミュレーション法として完成させる予定である。 計画に従い、平成25年度は空間方向に領域分割を行うことで、異なる長さスケールの現象を扱う手法を開発した。領域分割に伴う領域間の補間を高精度に行うための手法を導入することで、実用性の向上を図った。手法開発は概ね計画通りに進捗し、空間マルチスケール解析手法の要素技術を確立し、いくつかの計算例によりその基本的な性能を確認した。 以上により、研究は当初の計画通り進捗していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、平成25年度に開発した空間マルチスケールシミュレーション手法の機能強化を行う。微小スケールに対応する領域では、必然的に格子数が多くなるので計算時間が増大する。そこで、並列処理などの高性能計算技術を導入して、計算時間の短縮を図る。 もう一つの開発課題は、時間マルチスケールへの対応である。非定常流れ計算において、複数の流体現象が関係する際に、時間スケールの差が問題になる場合がある。このような現象の解析のための時間マルチスケールシミュレーション法を開発する。 空間マルチスケールの場合と同様に領域分割法を適用する。しかし、時間方向の空間分割では、領域毎に異なる時間刻みで時間進行することになるので、領域間のインターフェースに新たな技術開発が必要である。空間の領域分割の場合は、変数の値は全ての格子点で与えられているので、領域間インターフェースは空間補間で達成できる。同様に、領域毎に時間刻み幅が異なっている場合にも、時間積分の前に時間方向の補間を行うことで、インターフェスを実現する。しかし、陰的時間進行法を用いる場合は、新しい時間ステップの値を全格子点で同時に求める必要があるので、時間方向の外挿が必要となる。 これらの機能を備えた新しい時間進行スキームを開発し、計算例によって有効性を確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
旅費および学会参加費が当初の予定よりも少額であったためである。 次年度分予算と合わせて、物品費、消耗品費として支出する予定である。
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