研究課題/領域番号 |
25289318
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大沢 直樹 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90252585)
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研究分担者 |
小島 隆志 独立行政法人海上技術安全研究所, その他部局等, 研究員 (70392694)
高田 篤志 独立行政法人海上技術安全研究所, その他部局等, 研究員 (90470054)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | バラストタンク / 塗膜下腐食 / 非破壊モニタリング / Fe2+イオン / 蛍光 / エポキシ塗料 / アミン / セルオートマトン |
研究実績の概要 |
平成26年度に合成に成功したFe(II)感受性蛍光物質RhoNox-1の塗膜下腐食検知能力を評価した.塗料はPSPC認証済変性エポキシ塗料から着色顔料を除去した透明塗料を使用した.SS400ブラスト鋼板にRhoNox-1を添加した透明塗料を塗装した.試験板にはNaCl溶液滴下による初期腐食またはスクライブにより腐食起点を作った.試験板を腐食環境に暴露し蛍光発光を観察した.その結果以下の知見を得た.(1) RhoNox-1添加塗料の蛍光スペクトルは試薬単体とほぼ同一であり,腐食の進行につれ蛍光極大波長が575nmから長波長側にシフトした.波長シフト量は暴露時間と正の相関を示した.(2) 初期腐食部におけるRhoNox-1とFe(II)イオンの反応で生じたキレート化増大蛍光を塗膜上からの測定することで,アノード部の形状を明瞭に観察できた.(3) 透明エポキシ塗料塗装鋼板の塗膜下腐食進行の非破壊観察の目的には,1wt%のRhoNox-1をミストコートで塗布すれば十分である. 上記の塗料は顔料が微量なため防食性能が通常塗膜に比較して大幅に低かった.そこで,膜厚で色濃度が変るSI塗料にRhoNox-1を添加しパネル内で塗膜厚が変化する塗装試験板を作成して腐食試験を実施した.その結果,以下の知見を得た.(1) RhoNox-1がSI塗料に完全に溶解させる手法が確立できた.(2) SI塗料を使用した場合も透明塗料と同様な蛍光発光と波長シフトを確認した. さらに,塗膜下腐食メカニズムに関する仮説の妥当性を評価する目的でセルオートマトンに基づく塗膜損傷・腐食減肉の数値シミュレーション手法を開発した.開発手法の妥当性はスクライブ塗装試験板の実船暴露試験結果と比較して検証した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度の研究で,当初利用を計画していた既存Fe(III)感受性蛍光物質FD1の塗膜下腐食初期腐食検出能が十分でなかったためFe(II)感受性蛍光物質RhoNox-1を開発した.この作業に予想外の時間を要し平成25年度に計画全体に約6カ月遅れが生じた.平成26年度に遅延の回復に努めたが依然として約3カ月の遅延が残っており,平成26年度中に実施を予定していた複数腐食起点をもつ大型試験板試験が開始に至っていない.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度に作成したFe(II)感受性蛍光物質RhoNox-1添加SI塗装試験板を用いて,RhoNox-1の添加量,SI塗料濃度,塗装仕様を変化させた塗装試験板の腐食試験と蛍光観測を続行し,通常塗料との塗料組成・防食性能の乖離が小さく,かつ塗膜下腐食検出感度に優れたFCI塗装仕様を決定する. 大型試験板に上記で選択した塗装仕様のFCI塗装およびUI塗装を行って複数のスクライブを入れて複合環境サイクル試験を,多点で開始した塗膜下腐食が進行・合体して広範囲な塗膜剥離が生じるまで継続する. これらの結果を総合して,バラストタンク塗装面の塗装劣化・塗膜下腐食・複数起点腐食の合体・成長のシミュレーションモデルを提案し,実験結果および実船計測結果とシミュレーション結果を比較してモデルの妥当性を検証する.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は平成26年度中に購入を計画していた可搬式ファイバマルチチャンネル分光器の価格に相当する.平成26年度後半に仕様が確定したRhoNox-1添加SI塗膜でデモ機の性能検証を行ったが十分な空間分解能が得られなかった.また,平成25年度に購入した蛍光顕微鏡のフィルタを改良したところ分光器に依らなくても蛍光発光の変化が検出できる確証が得られ購入の必要性が低くなった.一方,平成27年1月から研究協力者に横浜国立大学大学院生が新たに加わり,当初想定より平成27年度に必要な旅費が増えることが予想される.これらの理由から,分光器購入費用を平成27年度の旅費不足分に充当するのが適当と判断した.
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次年度使用額の使用計画 |
セルオートマトン数値シミュレーションに関する研究連絡のため必要となる旅費の増加分に充当する.
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