研究課題/領域番号 |
25289320
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
篠田 岳思 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80235548)
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研究分担者 |
田中 太氏 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70432854)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | リスクアセスメント / Formal safety assessment / 海難事故 / ヒューマンファクター / リスク軽減対策 |
研究概要 |
本研究では,IMOにおいて今後のルール策定の鍵になるFSAによるガイドラインの補完を目指し,船舶の設計,運航,基準の安全対策を検討するためのリスクアセスメントによる評価法の確立を目標とし,操船時の人的過誤を人間の認知・情報処理理論による人的過誤モデルの構築を図り,データベースの作成からリスク解析と安全対策の費用対効果の評価に至るまで,一貫したリスク評価法の構築と適用を通してリスク評価法の検証を図ることを目的としている。 今年度は,研究課題として,主に,以下に述べる認知・情報処理理論を基にした人的過誤モデルの構築に取り組み,このモデルに基づき衝突海難のデータベースの拡充を進めた。 a)認知・情報処理理論に基づく人的過誤モデルの構築:人間の認知・情報処理モデルに基づく確率的リスク評価の概念を設定する。このモデルでは外界からの知覚情報や聴覚情報の刺激に対して,知覚,状況判断,行為判断,行為の状態推移にしたがい情報処理がなされ,緊急時の人間の情報処理への制約を加味してモデル化を行っている。研究では,見合い関係の生じた際の標準操船との対比から,相手船の発見,動静監視,避航判断,避航操船の状態推移として対応付け,操船時の人的過誤モデルの構築を行っている。 b)情報処理モデルに基づく衝突海難データベースの再構築と拡充:これまでの海難審判所が公表している海難審判裁決録を基にした200件あまりの衝突海難のデータベースの拡充をさらに図り,内航船の衝突海難についても検討を行った。人的過誤の要因抽出にはVTA ( Variation tree analysis )と呼ばれる事故時にとられた通常の操船とは異なる変動要因を抽出する方法を適用し,潜在的危害のありうる人的過誤要因を,a)において構築した人的過誤モデルと照合して,人的過誤要因の標準コード化を行い,構築しているデータベース項目へ改良を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,研究課題として,主に,認知・情報処理理論を基にした人的過誤モデルの構築に取り組み,このモデルに基づき衝突海難のデータベースの再構築と拡充を進めた。認知・情報処理理論に基づく人的過誤モデルの構築では,人間の認知・情報処理モデルに基づく確率的リスク評価の概念を設定しており,見合い関係の生じた際の標準操船との対比から,相手船の発見,動静監視,避航判断,避航操船の状態推移として対応付け,操船時の人的過誤モデルの構築を行っている。 また,情報処理モデルに基づく衝突海難データベースの再構築と拡充においては,これまでの海難審判所が公表している海難審判裁決録を基にした200件あまりの衝突海難のデータベースの拡充をさらに図り,内航船の衝突海難についても150件について検討を行った。人的過誤の要因抽出にはVTAにより事故時にとられた通常の操船とは異なる変動要因を抽出する方法を適用し,潜在的危害のありうる人的過誤要因を,a)において構築した人的過誤モデルと照合して,人的過誤要因の標準コード化を行い,構築しているデータベース項目へ改良を行った。 今後もデータベースの拡充を進めると供にモデルの精査をさらに進める必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
リスクアセスメントによる評価法の確立を目標として,本年度では以下のように研究実施を計画する。 [1]認知・情報処理理論を基にした人的過誤モデルの整備:前年度に引き続き,衝突海難に関わるリスク解析のために,人間の認知・情報処理理論を基にした人的過誤モデルの整備を行い,このモデルに基づき衝突海難のデータベースの拡充を進める。 [2]海難事故の人的要因を考慮したリスク解析モデルの構築:海難事故の人的要因を考慮したリスク解析モデルの構築を図るため,以下の項目を設定する。 a)ベイジアンネットワークを用いた操船時の人的過誤のモデル化:ベイジアンネットワークを用いて確率事象を条件付き確率として状態推移を考慮できる確率的リスク解析モデルの構築を目指す。 b)事象の生起確率値の整備:確率的リスク解析モデルを構築して行くためには,事象の生起確率値の整備を必要とする。また,これまで生起した事故データから生起確率の設定等,できる限り活用することを目指す。 [3]リスクを軽減する改善対策の有効性評価と費用対効果の把握手法:FSA(Formal safety assessment)において費用対効果の指標として用いられているGCAF(Gross Cost of Averting Fatality)によりRCO(Risk control option)の費用対効果の検討を行う。GCAFはΔC(対策にかかるコスト増分)とΔR(対策による削減リスク)でありΔCおよびΔRの設定を必要とする。次年度は,リスク削減効果ΔRの推定方法の確立について検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
3月上旬に計画していた船上での計測が本船の都合により実施が難しくなったため,次年度に延期した。このため,確保していた旅費を次年度に繰り越すこととした。 次年度5月頃に交通量に関わる計測を実施することとする。
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