研究課題/領域番号 |
25289325
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人海上技術安全研究所 |
研究代表者 |
山口 良隆 独立行政法人海上技術安全研究所, その他部局等, 研究員 (20344236)
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研究分担者 |
石村 惠以子 独立行政法人海上技術安全研究所, その他部局等, 研究員 (20415798)
大地 まどか 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40447511)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 船底防汚物質 / 銅 / 毒性 / 生物学的利用能 / 海水 / BLM / 化学分析 |
研究概要 |
多数の港湾で海水中の銅濃度の上昇が観察され、その原因のひとつに船底塗料の可能性がある。そのため港湾等の海洋環境中における銅の海生生物へのリスク評価の必要性が高まっている。しかし日本での研究例がほとんどなく、評価や規制に向けて状態把握が急務である。そこで本研究の目的は、日本の主要港湾の海水中銅状態把握と生物毒性試験を行うことである。 本年度は、Biotic Ligand Model(BLM)に関する化学分析法及び計算法の取得と海生微生物の毒性に関する予備試験を行った。海水中で銅は、様々な形態で存在するため生物に関わる銅形態(生物学的利用能)を区別する必要がある。本研究では、溶解している銅状態把握のため平衡モデルのBLMを採用した。またBLM計算には、海水中の化学物質の情報が必要である。そこで全有機炭素濃度、アルカリ度について装置を整備し、分析法を取得した。また計算に必要な陽イオン、陰イオンの分析法も取得した。さらに計測が難しい物質は、文献値を使用することでBLM計算の環境が整った。また東京港、徳島港の実海水について各項目の分析後にBLM計算を行い、各銅形態の情報が得られた。しかし会社倒産で想定の銅形態検証の分析法が恒久的に使用できないことが判明した。そこで代替法の調査を行い、人工生体膜を通して海水中の金属を捕集するDGT法が使用可能である事がわかり、次年度から新手法を含めた海水中の銅状態評価を行う。 生物毒性試験は、実海域海水での試験を想定し、銅以外の防汚物質の影響を調べるための予備試験を行った。東京湾の沿岸海域より採取した微生物に、船底塗料に使用されている各種防汚物質を用いて暴露による増殖阻害試験を行った。その結果、各防汚物質は増殖阻害作用があり、その中で有機スズ化合物の効果が顕著であった。そのため微生物の試験では、海水のコンタミネーション・レベルについて考慮する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一部変更があったが、ほぼ計画の通り実行できている。 変更内容:実海水中における生物学的利用能相当の銅を直接計測するストリッピング・ボルタンメトリー装置を販売するメーカーが倒産し、予定していた分析法が恒久的に使用できない状況となった。そのため代替法の調査を行い、原理が異なる別な手法で目的の海水中の銅状態把握ができることがわかり、今後は新手法も取り入れて研究を進める。
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今後の研究の推進方策 |
想定をしていた生物学的利用能相当の銅を直接計測するストリッピング・ボルタンメトリー法が恒久的に使用できない状況となった。そのため代替分析法の調査を行い、本研究の目的に使用可能なDGT法があることがわかった。DGT法は、生体膜に準じた材質を通してジェル内に銅を採取する方法である。次年度は、新手法を含めて海水中の銅に関する評価を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
購入を想定していた生物学的利用能相当の銅を直接計測するストリッピング・ボルタンメトリー装置は、メーカーが倒産したために購入が不可能となった。また他メーカーのストリッピング・ボルタンメトリー装置の調査を行ったが、目的の濃度が検出可能である装置は、なかった。そのため変更が生じた。 本年度に代替分析法の調査を行い、その結果として生体膜に準じた材質を通してジェル内に銅を採取するDGTと言う手法があることがわかった。次年度は、DGTに関するパーツや元素分析のための消耗品の購入を行うとともに、新手法も含めて銅の評価を行う予定である。
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