研究課題/領域番号 |
25289328
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人水産総合研究センター |
研究代表者 |
寺田 大介 独立行政法人水産総合研究センター, 水産工学研究所, 研究員 (80435453)
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研究分担者 |
橋本 博公 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30397731)
松田 秋彦 独立行政法人水産総合研究センター, 水産工学研究所, 主幹研究員 (10344334)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 海上安全 / 船舶工学 / 防災 |
研究概要 |
規則波中におけるパラメトリック横揺れ予測モデルの計算コードを粒子フィルタによる逐次データ同化が行なえるように拡張した。さらに、パラメータ同定のための方法として、超多粒子を用いる方法および自己組織型モデルを用いる方法に関してパラメータ同定の精度および計算時間などの検討を行った。超多粒子を用いる方法では膨大な計算時間が係るものの概ね良い同定結果が得られることが確認できた。一方、自己組織型モデルを用いる方法では、パラメータの初期値分布の与え方に工夫が必要であることが確認できた。この問題を解決するための方法としては、Nelder-Mead法の利用が有効であることが確認できた。 模型船実験による検証を行なうために、水槽内における位置および船速が計測できる自走可能なコンテナ船の模型船を製作した。この模型船を使用した自由航走実験を行なうことにより、船の運動データが計測でき、逐次データ同化で使用する観測データが取得できる。また、製作した模型船は船体に作用する流体力ベースでの比較を行なうための実験も実施できるようになっており、流体力の推定に関してもデータ同化の実施が可能である。なお、制作した模型船は実船が就航しており、実船データを用いた検証が行なえる。 パラメトリック横揺れ予測モデルと時系列モデルの関係を導出し、時系列解析に基づく大振幅横揺れの発生可能性の有無の判定法について示した。この方法は漁船などの横揺れデータを用いて検証した。その結果、この方法を実船の横揺れデータ解析法として用いることにより、船の安全運航支援の一助とできることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
規則波中におけるパラメトリック横揺れ予測モデルの逐次データ同化に関しては、一自由度モデルでの検証が予定通り実現できた。しかしながら、当初予定していた三自由度モデルに関する検証が実施できなかった。これは、当初の予定ではパラメータ同定の方法として超多粒子を用いる方法のみを考えていたことに起因している。超多粒子を用いる方法は、スーパーコンピュータの利用を前提としており、研究の自由度が狭められている。具体的には、平成25年度の中頃まではVPN経由で研究所外からでも計算を行なうことができていたが、セキュリティーの関係から、それ以降研究所外から計算を行なうことができなくなってしまった。この問題に対応するために、自己組織型モデルを利用する方法を採用した.この方法であれば、粒子フィルタで使用する粒子数が少なくても良いので、ノートパソコンで計算が実現でき、またパラメータの同定に関しても概ね良好な精度で同定が実現できることが確認できた。したがって、三自由度モデルに関する検証は実現できていないものの、自己組織型モデルによる方法に関しては多くの知見が得られた。これは大きな成果であると考えられる。 模型船実験に関しては、当研究所の試験水槽の一部で故障が発生したため、実施できなかった。故障箇所に関する修繕は昨年度末に終了したことから、今年度は模型船を用いた自由航走試験を実施する予定である。なお、計算コードの検証には過去に実施した模型実験のデータを使用した。 船の安全運航支援を具体的に実現するための時系列モデルを構築できた。具体的には、パラメトリック横揺れがExpARモデルで近似できることを明らかにし、横揺れが大振幅横揺れに発達するか否かに関して判定する方法が提案できた。これは非常に大きな成果であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
規則波中における三自由度のパラメトリック横揺れ予測モデルの計算コードを粒子フィルタによる逐次データ同化が行なえるように拡張する。パラメータ同定に関しては減衰力に着目し、この結果に基づいてパラメトリック横揺れ時における減衰力の推定式の提案を行なう。これに関しては、種々の困難が予想されるが、学会発表などを通して様々な方からご意見を頂きたいと考えている。 模型船を用いた自由航走試験を行い、逐次データ同化で使用するための観測データの取得を行なう。
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次年度の研究費の使用計画 |
当研究所にて模型船を使用した自由航走試験を行う予定としていたが、実験施設である試験水槽の造波装置が故障したため、年度内の試験実施が実現できなかった。そのため、試験実施時に雇用する予定であったアルバイトのための謝金を使うことができなかった。また、研究成果を取りまとめて論文誌に投稿する予定であったが、模型試験を行なえなかったために論文誌に投稿できる内容の成果を得ることができなかったことから、論文投稿料を使うことができなかった。 以上の理由により、研究費の繰り越しが必要となった。 予算は、模型試験実施時に雇用するアルバイトへの謝金、および論文誌へ研究成果を投稿する際の投稿料として使用する。
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