研究課題/領域番号 |
25289333
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
坂田 将 独立行政法人産業技術総合研究所, 地圏資源環境研究部門, 研究グループ長 (70357101)
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研究分担者 |
玉木 秀幸 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 主任研究員 (00421842)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 油層微生物 / 原油分解 / メタン生成 / 高圧培養 / 炭素-13 / トレーサー実験 / 遺伝子解析 |
研究実績の概要 |
平成25年度の研究で原油分解メタン生成活性が検出された山形県新堀油田の油層試料を用いて、地下(原位置)環境を模擬する培養実験を継続し、原油分解プロセスの解析を進めた。炭素-13のトレーサー実験、原油炭化水素成分の濃度分析、及び炭化水素分解に関する機能遺伝子の解析結果から、トルエンが主要な分解成分であることが判明した。メタン生成経路としては、まずトルエンへのフマル酸付加でコハク酸の誘導体が生成した後、安息香酸となり、ベンゼン環の開環、酢酸生成と進み、最後は酢酸資化及び酢酸酸化-水素資化によるメタン生成、と推定された。新堀油田の油層試料から得られた原油分解微生物集積系を、八橋油田の油層水+原油に添加し、油層環境模擬条件で培養した結果、原油分解メタン生成活性が検出された。このことは、バイオオーグメンターションによって枯渇油田の再生が可能であることを示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
油層試料の採取、原油分解ポテンシャルに関連する地球化学的・分子生態学的データの収集・解析、嫌気高圧培養による油層微生物の原油分解メタン生成ポテンシャルの検出、炭素-13のトレーサー実験と機能遺伝子の解析による原油分解反応の解析の全てに関して、計画どおり研究が進捗しているため。
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今後の研究の推進方策 |
山形県新掘油田の流体試料(油層水+原油)の集積培養によって獲得した原油分解メタン生成コミュニティーの遺伝子解析を進め、特徴的に優占するバクテリアが原油分解に関与している可能性を検証する。さらに本申請課題の集大成として、これまで多様な油層水の集積培養実験で得られた微生物の原油分解メタン生成ポテンシャルに関する情報、油層温度や原油や油層水中の有機物組成等の地球化学的情報、および油層微生物の多様性や炭化水素分解等の機能に関する遺伝子情報を総合的に解析することによって、生物的原油分解メタン生成ポテンシャルの指標となるバイオマーカーを提示し、油層特性を迅速に評価する技術を確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成25年度の研究で油層試料から原油分解メタン生成微生物コミュニティーを獲得し、26年度にその代謝経路と関与微生物を解明するための実験作業を進めたが、嫌気・高圧条件での当該コミュニティー中の微生物の生育速度が遅く、メタゲノム解析と代謝産物の分析によって原油分解微生物の特定とその機能を解明するために、なお培養を継続し集積度を高めることが必要と判断したため。
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次年度使用額の使用計画 |
有機物分析・炭素同位体トレーサー実験、遺伝子解析等の手法を用いて、油層微生物の原油分解代謝経路および関与微生物の特定とその役割について解析を進めるために、実験補助を行うテクニカルスタッフの人件費とメタゲノム解析等の外注費に使用する。
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