研究課題/領域番号 |
25289335
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
松山 政夫 富山大学, 水素同位体科学研究センター, 教授 (90135004)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | トリチウム / 保持量 / BIXS法 / 非破壊分析 / プラズマ / 対向材料 |
研究概要 |
大量かつ高濃度のトリチウムが燃料として使用される核融合炉では、炉内材料の表面がトリチウムに曝され、一部のトリチウムは材料の表面層に吸着・捕獲される。このようなトリチウムの挙動は安全性の観点から注意が肝要である。特に、高エネルギー粒子が衝突するようなプラズマ対向材料の表面は、化学的・物理的スパッタリングを受け、損耗と同時に堆積物の成長に伴う材料の表面改質も起こり、表面構成原子の物理的・化学的状態が変化する。この様な変化はトリチウムの捕獲・脱離挙動に大きな影響を与え得る。 このような観点より、本研究では炉内での粒子制御やメンテナンス作業時における安全対策の検討に資するための基礎的データベースの構築を目的として、表面改質を受けた材料表面のトリチウム捕獲・脱離挙動を評価し得る新規のBIXS測定装置の開発とその適用性を調べる。従来、このような測定において大きな問題点はトリチウム曝露後に試料を一旦大気中に取り出してトリチウム保持量の測定が行われていたことである。即ち、トリチウム曝露後に試料を大気にさらすことにより、試料表面の化学的状態の変化が起こり、トリチウムの保持量や保持状態が変化する可能性があり、炉内でのトリチウム保持挙動とは異なる結果を示す可能性がある。 そこで、本年度は先ず従来法と同様の手順でプラズマ曝露試料に対する実験を行い、トリチウムの保持量がトリチウム曝露前の加熱排気の温度に依存することやトリチウム分布の不均一性並びに室温での不均一な脱離挙動を確認した。これに加えて、このようなトリチウム保持・脱離挙動の詳細を解明するために、加熱排気からトリチウム曝露及びBIXS測定までの一連の操作おいて試料を大気にさらすことなく真空装置内で測定し得る新規のBIXS測定装置の検討及び設計を行い、次年度に構築予定の製作図を完成させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は、先ず、既設のBe窓製のBIXS測定システムを用いてプラズマ曝露試料にトリチウムガスを曝露して表面の保持量や表面分布を調べた。なお、この際の測定では試料を大気中に取り出して測定した。その結果、トリチウム保持量はトリチウム曝露前の排気時の温度に強く依存することが知られた。また、大気中に保管している間に表面のトリチウム量は減少したが、表面の濃度分布を調べたところ、不均一な濃度変化になっていることが知られた。このようなトリチウムの保持・脱離挙動を解明するためには、トリチウム曝露後、大気中に取り出すことなく測定するための実験が必要である。 試験材料をトリチウムに曝露したのち、材料表面のトリチウム量、炭素及び酸素の濃度を大気中に出すことなく直ちに測定できるようにするために、トリチウム曝露装置とX線測定装置の間を移動可能な新規BIXSシステムを検討し、設計した。なお、設計に際しては、次年度の研究経費で購入予定の新規BIXSシステムに採用する真空対応の極低エネルギーX線検出器の設置を考慮し、X線検出器側の入射窓の構造や材料等について特に詳細な検討を行い、予定通りに製作図を完成した。炭素(0.277 keV)や酸素(0.525 keV)等の特性X線を高感度で測定できるようにするためには、窓材無しの構造が理想であるが、検出器表面のトリチウム汚染を避けることが不可欠であり、かつ低エネルギーX線を測定できるようにするために、極薄の有機薄膜から成る特別な窓材を選択した。これにより従来と同様のアルゴンガス及び真空雰囲気でのBIXS測定が可能となり、当初の計画通り材料表面の構成原子とトリチウム保持挙動との関連性を評価し得る研究体制の準備ができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、先ず、整備予定である「極低エネルギーX線検出器」の仕様を策定し、購入手続きを進める。極低エネルギーX線検出器が納入され次第、in-situトリチウム測定システムに連結し、新規BIXSシステムの基本的性能であるX線エネルギーの測定下限(測定可能な元素の評価)、エネルギー分解能、測定感度及びバックグラウンドレベルを測定し、本システムの基本性能の評価を行う。この際の評価には所定量のトリチウムを注入した基準の金属試料を予め調製しておき、これを用いて試験を行う。新規BIXSシステムの評価を終えたのち、超高真空条件下で処理した試料にトリチウムガスを曝露してBIXS測定を行い、得られたX線スペクトルの解析を行う。なお、測定は一定時間ごとに行い、スペクトル変化を追跡し、表面トリチウム濃度及び内部分布の変化を調べる。これらの一連の測定は清浄表面を有する金属材料に対するトリチウム保持量評価の基準となる。 この様な清浄表面におけるトリチウム挙動を基準とし、プラズマ曝露された表面堆積物を有する試料を所定温度でトリチウムに曝露する。この後、この試料を大気に晒すことなく、本研究で製作された高感度な新規BIXSシステムによって表面に保持されているトリチウム量、炭素量および酸素量との関係を調べる。これにより先の清浄表面を有する金属材料に対する測定結果との比較を行い、トリチウム保持に対する表面堆積物の影響を検討する。なお、本実験で使用するプラズマ曝露試料は、核融合科学研究所の連携研究者が主体となり、大型ヘリカル実験装置を利用して製作する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成26年度に高額の極低エネルギーX線検出器を装備した新規BIXSシステムを整備する計画であり、そのために平成25年度での基金の使用を抑制した。 平成26年度に使用可能な基金と補助金の一部を充当して極低エネルギーX線検出器を装備した新規BIXSシステム及びトリチウム曝露試料の搬送システム等を整備するために使用する計画である。
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