昨年度までの成果に基づき、薄肉構造体のタングステン―銅水中爆接試験体、相変化熱輸送を伴うヒートシンク体を試作し、繰り返し短パルスによる熱負荷をレーザーパルスによって模擬することによって総合的な核融合炉ダイバータとしての熱輸送特性、健全性などから技術的な成立可能性を評価した。 特に27年度は、総合的な熱輸送と、ELMによる単パルス繰り返しの熱負荷の吸収には、全熱輸送経路の中で薄肉ターゲット体でもタングステン直下のヒートシンクにおける熱的機械的緩衝効果が最も重要であることを見出したことから、新たに低温粉末冶金(メカニカルアロイング)と低温圧延による先進的銅合金材を製作してその熱移送特性を評価した。その結果、従来困難であると思われていた銅合金、特にCuCrZrについて、強度と延性が同時に向上すること、また耐照射性についても、原型炉で想定される範囲で悪影響は見られない見込みを得た。これにより、単パルスの繰り返しによる局所的な熱負荷と温度勾配、応力集中は薄肉タングステン直下に先進銅合金により慣性的に吸収することで全体として10MW/m2の平均熱流束を受けることが可能であることを示した。さらにそこで平均化された熱流束を液体熱媒体の相変化により、ヒートパイプ原理を応用して小温度差で輸送できる。 以上の成果を総合すると、核融合炉ダイバータで、特に熱利用までを考慮した場合は、高温において小さな温度差で平均10MW/m2レベルの熱流束を熱利用系まで輸送する、という一連のエネルギー移行現象の理解に基づいて経路を設計し、それに適した材料と構造が必要であることが結論される。またそのための構造として、タングステンの水中爆接による薄肉ターゲット、低温冶金による先進銅合金、相変化を利用した熱輸送系により、これらの要求をすべて満たす、きわめて大きな熱輸送性能を持つダイバータに見通しが得られた。
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