研究課題
基盤研究(B)
LHDトムソン散乱装置を含め複数台のYAGレーザーを用いるマルチレーザートムソン散乱装置は,実験状況に応じて柔軟な運転が可能であるというメリットがあると同時に,これまでのビームパッキング法では各ビーム光路が完全には一致していないことによるデメリットも存在しました。本申請課題では偏光制御技術を用い,複数のレーザービームを完全同軸化(一本化)することでそのデメリットを解消し,マルチレーザートムソン散乱装置において一つのマイルストーンとなる技術を確立することを目的とした研究を行いました。平成25年度は基本となる2本のレーザービームの同軸化のために偏光子と波長板からなる同軸化光学システムを構築し,実際のプラズマ実験において運転試験を行いました。長時間(長期間)運転においても特に問題なく稼働できることを確認しました。また,レーザーパルスとポッケルスセルを正確に同期させる必要がありますが,数百psecの精度でレーザーのQスイッチとポッケルスセルを同期させるため, 10psecレベルの精度を持つパルスジェネレーターとジッター100psec以下の高速パルス高圧電源を組み合わせた場合の動作状況を検討し,ポッケルスセルをレーザーと同期して動作させるための同期回路と高圧電源を準備しました。あわせて,ポッケルスセルの結晶に複数本のレーザービームを通過させるために生じる熱効果を系統的に調べ,本研究課題で必要となるデータを取得しました。平成26年度では現有3台のレーザー全てに同軸化システムを組み込む計画です。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度は以下の計画で進めました。(1) レーザーの偏光特性の改善:現有のレーザーの内,偏光特性の良くないレーザーについて,垂直成分の混入比を目標値1/30以下,許容値1/10としてレーザー装置内部の光学系を調整しました。(2) ポッケルスセルの高速動作の検証:ポッケルスセルをレーザーと同期して動作させるための同期回路と高圧電源を準備し,その運転手法を確立します。高速同期システムは数百psecの精度でレーザーのQスイッチとポッケルスセルを同期させる必要がありますが,市販の10psecレベルの精度を持つパルスジェネレーターとジッター100psec以下の高速パルス高圧電源をよく吟味して選定し,研究を進めました。平成25年度のLHDマシンタイムにおいて2台のレーザーの同軸発振運転を行い,長時間運転時でも過誤なく動作することの検証,実際のプラズマ計測において種々の基礎データを取得しました。(1)(2)とも完成形とするには一部小規模な手直しをする予定ですが,基本的に順調に進みました。加えて,平成26年度に予定しているポッケルスセルの熱効果の対策に関する基礎データを取得しました。
(1) 平成26年度:平成25年度の研究成果を踏まえ,平成26年度に現有3台のレーザー全ての同軸化システムを構築します。これにより合計3台のポッケルスセルを使用しますが,最下流のポッケルスセルは合計3本のビームが通過するため熱効果によるビームの乱れが生じる恐れがあります。実機での基礎データを取得しつつ,必要な対策を行います(熱効果を低減させるための熱除去(冷却)システムの製作など)。(2)平成27年度:平成27年度にはLHDトムソン散乱装置のルーチン内に統合するためのシステムを組み,完成形とします。本システムではどこか1か所に光学素子の損傷,ミスアライメント等が発生すると,それに起因する戻り光等により複数のレーザー装置本体に被害が及ぶ可能性があり,装置だけでなくレーザー光による失明などの人身事故の可能性もあります。これを避けるため,各レーザーにファラデーアイソレーターとシャッター機構を組み込み,完成形とします。
当初,今年度にパルスジェネレーターを必要台数分準備する予定でしたが,LHD本体およびレーザーシステムとの同期方法について,より使いやすく,かつ,誤動作を防ぎレーザー装置本体の安全性のより高めるため,同期方法(アルゴリズム)を見直すことにしました。このため,先ず既存の装置を使ったテスト運転を行い,本システムの構築は次年度に持ち越すことにしました。上記のテスト結果を踏まえ,平成26年度に最も本研究課題に適したパルスジェレーターを購入する計画です。
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