研究課題
LHDトムソン散乱装置を含め複数台のYAGレーザーを用いるマルチレーザートムソン散乱装置は,実験状況に応じて柔軟な運転が可能であるというメリットがあると同時に,これまでのビームパッキング法では,各ビーム光路が完全には一致していないことによるデメリットも存在しました。本申請課題では偏光制御技術を用い,複数のレーザービームを完全同軸化(一本化)することでそのデメリットを解消し,マルチレーザートムソン散乱装置において一つのマイルストーンとなる技術を確立することを目的とした研究を行います。平成26年度は基本となる2本のレーザービームの同軸化のために偏光子と波長板からなる同軸化光学システムを構築し,長時間(長期間)運転においても支障なく稼働できることを確認しました。また,レーザーパルスとポッケルスセルを正確に同期させるための動作状況を検討するとともにこれまでの経験を基にポッケルスセルの結晶に複数本のレーザービームを通過させるために生じる熱効果について検討を行いました。平成27年度では現有3台のレーザー全てに安全確保のためのアイソレータを含む同軸化システムを組み込む計画です。
2: おおむね順調に進展している
平成26年度までに下記の実験を行いました。ほぼ順調に進展しております。(1) レーザーの偏光特性の改善:現有のレーザーの内,偏光特性の良くないレーザーについて,垂直成分の混入比を目標値1/30以下,許容値1/10としてレーザー装置内部の光学系を調整し,目標値を達成しました。(2) ポッケルスセルの高速動作の検証:ポッケルスセルをレーザーと同期して動作させるための同期回路と高圧電源を準備し,その運転手法を決定しました。(3) 長時間運転の検証:これまでにLHDマシンタイムにおいて2台のレーザーの同軸発振運転を行い,長時間運転時でも過誤なく動作することの検証を行い,特に支障ないことを確認しました。
平成27年度にはLHDトムソン散乱装置全体のルーチン内に統合するためのシステムを組み,ルーチン的に自動運転が可能なかたちにする計画です。加えて,本システムではどこか1か所に光学素子の損傷,ミスアライメント等が発生すると,それに起因する戻り光によって複数のレーザー装置本体や伝送ミラー等に被害が及ぶ可能性があります。装置だけでなくレーザー光による失明などの人身事故の可能性もあります。これを避けるため,各レーザーにファラデーアイソレーターとシャッター機構を組み込み,完成形とします。
H26年度にポッケルスセル用の高圧電源とこれを駆動させる高速パルスジェネレーターを新規に購入する予定でしたが,予備実験の段階ではこれを破損させる恐れがあるため,現所有の他の中古品を用いて試験することとしました。H26年度の実験において安全性の検討はほぼ確認できましたが,納期の問題でH26年度内に購入することが難しくなったため,本品はH27年度に持ち越すことになりました。
H27年度に上記の物品を購入し,研究を進める計画です。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (8件)
40th EPS Conf. Proc.
巻: 1 ページ: P4.009-1-4
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10.1063/1.4885542
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