核融合炉用の超伝導マグネットに高温超伝導体を用いることができれば、低温超伝導体を用いた場合に比べて、より高い安定性と経済性が期待できる。しかし、核融合炉に必要な大型の高温超伝導マグネットを実現するためには、マグネットの巻線内部で発生した熱をいかに効率よく短時間で外部へ取り出せるかが重要となる。熱を伝える能力が高い(熱伝導率が大きい)と考えられる金属板等を巻線内に挟み込む方法では、熱拡散率を同時に大きくすることができず、一定時間内に外部に取り出せる熱量には限界がある。そこで、高熱伝導率と高熱拡散率を同時に達成できる熱輸送素子としてヒートパイプに着目し、平板状の自励振動式ヒートパイプ(OHP)をマグネット巻線内部に組み込んだ新しい冷却構造の開発研究に取り組んだ。超伝導マグネットの巻線内へ組込可能な高機械強度を持ち、立体流路を有する平板状のOHPを新たに開発し、その優れた熱輸送特性を超伝導マグネットを動作させる低温環境下での実験で実証した。次に、高温超伝導マグネットとOHPを組み合わせ、マグネットの冷却特性を改善する効果について、有限要素法を用いた詳細な解析を行った。更に、この優れた熱特性を有するOHP組込高温超伝導マグネットの実応用例として、液体水素を貯蔵する容器を磁気浮上させて熱侵入を極限まで低減すると同時に、地震発生時に免震制御を行って高い安全性を実現できる超伝導磁気浮上装置への適用について検討し、実現可能であることを明らかにした。
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