研究課題/領域番号 |
25289344
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
田中 照也 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (30353444)
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研究分担者 |
相良 明男 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 教授 (20187058)
菱沼 良光 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (00322529)
吉野 正人 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (10397466)
坂上 裕之 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (40250112)
近藤 正聡 東海大学, 工学部, 准教授 (70435519)
牟田 浩明 大阪大学, 工学研究科, 助教 (60362670)
田村 仁 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (20236756)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 水素化物 / 中性子遮蔽材 / 粉末プレス / 熱伝導 / 重量密度 / ZrH2 / TiH2 |
研究実績の概要 |
50MPa~910MPaおよび50MPa~1220MPaの圧力で室温において製作したZrH2、TiH2粉末プレス試料について、放射線遮蔽体の除熱設計で重要となる材料密度(プレス圧力)と熱伝導度の関係を調べるとともに、電子顕微鏡を用いたプレス紛体中の結晶状態変化の解析(EBSD)等、材料基礎データの取得を進めた。本課題で最も重要な、核融合炉内において事故時に想定されうる真空環境における温度上昇時の水素放出については、水素化物粉末のTDS(昇温脱離ガス)分析により調べ、両材料ともに約350℃から顕著な放出が生じることを確認した。また、炉外機器の遮蔽において最も過酷な事故時に想定される大気環境中での温度上昇時の酸化について熱天秤測定を実施し、約200℃からの酸化に伴う重量増加を観測した。特にZrH2は1000℃までの酸化で、ブロック体の形状が著しく変化する可能性がある。その他、プレス試料の重量密度向上を目的として、微細化粉末の混合等の試みを進めた。 光学的手法による水素分布測定については、他グループ研究報告を参考に、雰囲気ガス制御下でのLIBS(レーザー誘起ブレークダウン分光)測定を重点的に試みたが、水素に対応する信号取得に至っておらず、パラメータ調整等を継続している。 高温領域での水素放出を抑える試みとして、原料液体を塗布するゾルゲル法によるSiO2被覆成膜を検討した。350℃で有機成分の除去とSiO2生成を確認したものの、本手法適用のためには、水素化物自体の酸化を抑えるために酸素分圧制御等が必要と考えられる。 水素化物の核融合炉における適用については、中性子・γ線輸送計算による遮蔽特性の理解をすすめるとともに、今年度取得した水素放出特性を基に、ヘリカル型発電炉の構造設計と整合性のとれた使用位置、使用形態、温度・雰囲気制御について提案を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1) 粉末プレス試料の試作と特性評価:当初計画では今年度中にCIP(低温等方プレス)による大型ブロック体の試作を計画していたが、核融合炉で使用した際の安全性や使用条件検討、確定のために、正確な水素放出特性のデータ蓄積を優先すべきであると考え、特に真空中でのTDS測定による水素脱離挙動、大気雰囲気中でのTG/DTA測定による酸化データ取得に重点を置いて研究を進めた。CIPによるブロック体試作は、研究分担者が所有する装置を用いてすぐにでも実施可能であり、全体計画に顕著な遅れをもたらす要因にならない。 (2) 水素化物分布の評価手法:将来の核融合炉においての適用が考えられるLIBSやラマン分光等の光学的手法の適用を試みている。特にLIBSについて、雰囲気制御下での測定に重点を置いたものの、水素に対応した信号取得に至っておらず、27年度パラメータ調整を試みるとともに、レーザーアブレーション時の雰囲気中の水素濃度を直接QMS(四重極質量分析器)でとらえる試み等、光学的な要素を組み込みつつ、適用実験を進める計画である。この項目の遅れから、やや遅れているとした。 (3)セラミック被覆による水素放出抑制:計画に従い、ゾルゲル法によるSiO2被覆の焼成条件を調べ、350℃で有機溶剤の除去とSiO2層が得られた。しかし、水素化物自体の酸化物が200℃付近で生ずることから、本手法の適用には酸素分圧の制御等の研究が必要となる。一方、大気中での酸化速度は比較的遅く、表面酸化層が水素放出抑制バリアとして有効に働くことが期待されるため、27年度に重点的に調べる。研究進展に伴う方針の修正であり、計画が遅れる要因とはならない。 (4)使用環境設定へのフィードバック:本年度実施の水素放出特性評価と中性子・γ線輸送計算に基づき、核融合発電炉における設置位置、形態、雰囲気制御について提案を行い、計画通りに進めた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)ブロック体の試作と特性評価:本課題で注目しているZrH2及びTiH2のうち、これまでの粉末プレスディスクの試作結果から、より高密度化が望めるTiH2に重点を置き、5x5x5cm3程度を目標に水素化物ブロックの試作を行う。CIP(低温等方プレス)法等を用い、ブロックサイズと充填密度の関係、ブロック内の密度分布、材料粉末の粒径との関係等を調べ、高密度化の方針を見出す。 (2) 水素化物分布の測定手法: LIBSやラマン分光の水素分布評価への適用について、引き続きパラメータ調整を試みるとともに、LIBS用レーザー照射により脱離した水素をQMS(四重極質量分析器)により捉える手法等、将来の核融合炉における材料評価への適用可能性がある光学的な要素を含む有効な手法を見出すことを目指す。 (3) ガスフロー、放射線環境下における水素保持特性:核融合炉の真空容器内においては、温度管理や水素保持の観点から、遮蔽体ユニット内に水素含有Heガス等を流すことによる温度・水素分圧管理が必要になると考えている。真空容器外では、遮蔽ブロックを収める金属ケースが破損して、大気に晒される可能性を考慮する必要がある。真空チェンバー内に水素化物ブロックを置いて加熱し、He、大気フロー条件下における水素脱離速度、材料酸化、寸法変化についての基礎データを取得する。原料水素化物粉末の表面に酸化層を設けた際の水素放出抑制機能についての評価を行う。放射線の影響については、イオンビーム照射等により水素の脱離を調べる。 (4)使用環境設定や核融合炉設計への適用:本課題で得られた水素化物ブロックの重量密度や熱伝導特性、高温領域での水素保持特性については、核融合炉内において想定される遮蔽ブロックの中性子遮蔽性能の予測や、核発熱除去の観点からの使用場所や冷却条件、使用温度条件の検討に利用し、核融合炉設計への適用案としてまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
H26年度の年度末に近い時期に、水素化物ブロックの重量密度向上に寄与する可能性がある水素化物粉末の微細化がボールミル等の手法により容易に行える可能性があることが分かり、微細化水素化物粉末の試作と電子顕微鏡観察による確認作業を行った。その結果に基づいて、粉末微細化を効率よく行うために他に優先して必要となる物品の有無について検討することとしたため、他物品の調達時期を遅らせることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額の大部分については、H27年度に計画されている大型水素化物ブロック体の高温安定性を調べる実験、および、イオンビーム照射実験に必要となる物品調達での使用がすでに確定しており、また、残りについてもH27年度の早期に実施するCIP法による水素化物ブロック試作・分析に必要な物品の購入に使用する計画である。
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