福島第一原子力発電所事故時に発生したと考えられる、サプレッションプール内の温度成層化現象とその破壊現象を解明する事を目的として実験的に研究を進めている。 従来の実験が矩形容器内への蒸気注入である事から、実機と同様のトーラス形状への蒸気注入実験を実施した。その結果、矩形容器においての温度成層化現象時の自然対流流動パターンと、トーラス形状における自然対流流動パターンが同一であることを見出した。低温側では流動は一切しておらず、高温側が自然対流で全体を均一に温めている事が判った。 さらに、温度成層破壊をもたらす要因として、この自然対流の大きさが関与している可能性を明らかにした。サブクール度が減少する事に伴い、蒸気凝縮が抑制される。その結果として、蒸気による浮力の効果が増大し、自然対流を大きく駆動する。特に、下降もぐりこみ領域における下降運動エネルギーが大きくなり、成層界面を破壊する事が、成層破壊の一つの要因であることを実験的に確認した。駆動力を決定するのは、直接接触凝縮だけではなく、非凝縮性ガスの影響もある。この事から、非凝縮性ガスを上記に混入した実験も実施した。これらの結果から、非凝縮性ガスが直接接触凝縮や自然対流に与える影響を議論した。 また、昨年度提案したリチャードソン数モデルを拡張し、上記下降流による影響を取り入れた、修正リチャードソン数を提案した。この結果、この修正リチャードソン数によって成層化を整理できる事を示した。
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