研究課題/領域番号 |
25289354
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
功刀 資彰 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40301832)
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研究分担者 |
横峯 健彦 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40240204)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 軽水炉 / 沸騰 / 振動 / 安全性 |
研究実績の概要 |
本年度は,発熱棒の振動現象と壁面との相互作用を明らかにすることを目的とし,プール沸騰体系において発熱棒の近傍にステンレス板の壁を設置し,サブクール状態での核沸騰による発熱棒表面での気泡の挙動と振動特性を調べる実験を行った.壁は,発熱棒の片側だけに設置する「1枚壁」,発熱棒を2枚の壁で挟む「平行壁」,発熱棒の半面を壁で囲う「L字壁」の3種類の配置とした. 気泡挙動の観察により,壁配置の種類に依らず,発熱棒と壁とのギャップが狭い場合には,気泡の合一・成長が促進され,直径5mmを超えるような大気泡が発生することが明らかとなった.また,発熱棒に対する壁の配置(発熱棒との位置関係を変化)によって,サブクール度を変化させた際の気泡の挙動や大気泡発生頻度に違いが生まれることがわかった. 振動加速度の測定実験によって,サブクール度が小さい場合には,大気泡の発生・離脱によって大きな振動が励起されることが確認された.さらに,サブクール度を大きくしていくと,加速度RMS値は極小値をとり,その後は気泡の凝縮による圧力変動によって振動が励起され、その振動は1000‐3000Hzの高周波であることが示唆された。また,壁の配置による気泡挙動の違いによって、加速度RMS値が極小値をとるサブクール度が変わることが確認された. 円柱発熱棒の沸騰励起振動は,実際の原子炉における燃料棒でも起こる可能性のある現象であり、本実験では原子炉内の燃料棒の挙動を解明するための基礎的な研究として壁面を設置した体系での実験を実施した.今後は,壁面を設置した体系での実験をサブクール度や壁の配置などをさらに変化させて実験を行うことによって,発熱棒が壁面から受ける効果をさらに詳細に評価するとともに,原子炉内により近い体系である管群体系での実験がの必要であると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,プール沸騰体系において発熱棒の近傍にステンレス板の壁を設置し,サブクール状態での核沸騰による発熱棒表面での気泡の挙動と振動特性を調べる実験を行った.壁の配置は,発熱棒の片側だけに設置する「1枚壁」,発熱棒を2枚の壁で挟む「平行壁」,発熱棒の半面を壁で囲う「L字壁」の3種類とし,模擬燃料棒ヒータと壁面との距離のみならず,壁の幾何学的配置によっても大きな影響があることを明らかにした点は,27年度の試験計画の立案に大きな指針となった.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,壁面を設置した体系での実験をサブクール度や壁の配置などをさらに変化させて実験を行うことによって,発熱棒が壁面から受ける効果をさらに詳細に評価するとともに,原子炉内により近い体系である管群体系での実験がの必要であると考えられる.
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次年度使用額が生じた理由 |
実験は順調に進捗しているが、昨年度と同様に沸騰している水中に設置可能な加速度計センサーは存在しておらず、通常の耐水性のある加速度センサーを代用して用いているが、本実験はその使用上限温度以上の環境であるため、頻繁に断線して使用不能となっている。したがって、本センサー(1台約20万円)は消耗品であり、10台分(200万円)を準備していたが、実験手順を工夫したため予想外に断線が少なく、消耗品費に余剰が生じたため、27年度へ繰り越すことができる。この費用を27年度に計画している燃料集合体模擬実験の試験部製作および実験実施に利用することが出来るため、実験装置の細密化や実験成果の効率的な取得に役立てられる。
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次年度使用額の使用計画 |
平成25年度および26年度で取得したデータおよび知見により,近接壁との距離と体系によって干渉状況が大きく異なることが分かったので,この費用を投入して燃料集合体を模擬した7本バンドル体系での試験部を製作し,バンドル中心のみを加熱した条件で実験を行い,高速度カメラおよびカセグレン光学系を用いた可視化観察を行うとともに,加速度計での振動計測を行い,燃料集合体バンドルの健全性に関して評価するとともに、健全性維持のための方策を検討する。
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