研究課題/領域番号 |
25289357
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
松原 幸治 新潟大学, 自然科学系, 教授 (20283004)
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研究分担者 |
長瀬 慶紀 宮崎大学, 工学部, 准教授 (90180489)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 太陽エネルギー / 集熱 / 蓄熱 / 発電 |
研究概要 |
2013年5月、太陽熱発電に関する研究情報収集のため、スペインとフランスの各地の研究機関と太陽熱発電所を訪問した。スペイン・アルメリア近郊のPSAでは、タワー型集光装置、リニアフレネル集光装置、高温型空気レシーバを見学し、太陽熱発電の利点として、発電効率が高いことだけでなく、機械、光学、システム工学、エネルギーの多岐にわたる技術の融合であり、産業上の多様性を確保できることを伺った。スペインでは、Abengoa Solar、Torresol Energyを訪問し、後者では、100MW太陽熱発電所Valle1&2のトラフ型集光集熱装置を見学できた。フランスでは、フォン・ロムー・オデイヨ・ヴィア近郊のCNRSを訪問し、太陽炉を見学し、太陽集熱ガスタービンの研究に関して意見交換できた。同年9月には、アメリカ・ラスベガス開催のSolarPACESに出席し、世界最大級のポイント集光型太陽熱発電システムを保有するイバンパ発電所を見学した。この学会では、ソーラーガスタービンに関する多くの講演がなされており、本研究の主要課題である高温型粒子集熱システムの研究発表も行われていた。その中でも、アメリカ・サンディア国立研究所による落下式粒子集熱システムや、ドイツ・DLRによる駆動式粒子集熱システムが先進的であった。 このように収集した研究資料を踏まえて、高温型集熱器の検討を行った。本研究では、粒子集熱器の検討を主眼とするが、その実現には課題が多いため、それと平行して、粒子を用いないキャビティ式集熱器も検討するものとした。このため、二重円管の内筒に集光を照射し、二つの円管の間に構造物を入れて、なおかつ空気を流すことで集熱する方式を考案した。この装置の三次元図を作成し、内部の熱流動特性に関する数値解を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
太陽熱の研究施設と発電所(フランス、スペイン、アメリカ)を訪問し、先進的な研究動向と実用発電システムを見学し、アメリカのSolarPACESでは高温集熱技術に関する研究講演を多数聴講できた。太陽熱発電分野の研究の多くは主として各国の国立研究所が行っているため、研究情報にアクセスすることが、他の分野と比較して難度が高い。太陽熱研究会等で構築した人脈を通して、ヨーロッパの研究所とアクセスでき、その主要設備を実地に見学できただけでなく、研究者とも意見交換できたことは、本研究を進展させるため、極めて有効であった。ヨーロッパの太陽熱発電所の内部は技術的ノウハウの宝庫であり、設備を間近に見ることができ、技術的に克服すべき課題を理解できたことも有効であった。さらに、高温集熱技術で多用されるSiCハニカムは日本では市販されておらず、実物を見ることも容易でないが、ヨーロッパ研究機関が保有する実物を見学することができ、画像として記録もできた。 また高温集熱技術の研究動向の調査においては、米国開催の国際会議において、ソーラーガスタービンの熱源の研究としての講演が多くなされており、この分野の研究が海外で活性化していること、ならびに、研究動向と問題点を把握できたことも有意義であった。 本研究では、これらの研究情報を踏まえて、新型の高温空気集熱器のモデルを考案し、その三次元図面を作成し、熱流動特性等の数値解を得ることができた。 以上の通り、研究を遂行する上で不可欠な海外での先進的研究情報を収集することができ、さらに新型集熱器の概念設計ができたことは収穫であった。このため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の方策として、粒子を利用した高温集熱器の概念設計を行い、その可視化実験ないし数値シミュレーションによって、集熱器形状と運転条件を検討すること、さらに、太陽シミュレータによる集熱実験に向けて準備を進めることが必用である。 現時点では、これまでに集めた研究情報を踏まえて、循環型ないし移送式の流動層を利用した集熱システムを考案する予定である。集光方法としては、石英窓を排除して、壁面に集光集熱する方式を検討している。集熱方式としては、粒子流動層によって固体・気体混相流を集光集熱壁面の裏側に吹き付ける伝熱方法が高熱伝達率を得られる有望な方法と考えている。また、集熱と蓄熱を同時に行うシステムの実現については、衝突噴流方式による集熱の後、高温化した粒子が蓄熱タンクに蓄えられる形式を考えられている。 この方向のこれまでの研究の蓄積としては、二塔式流動層の可視化と数値解析を行った実績がある。従って、この実績を発展させて、より高度な集熱蓄熱システムに移行するための研究を展開することを計画している。 このような循環式ないし移送式の集熱・蓄熱流動層は、太陽集熱において有効と考えられるが、過去に同様の研究例が乏しいため、相当の試行錯誤が予想される。このため、このような集熱・蓄熱流動層の研究開発と平行して、より単純な、窓付き円筒式流動層による集熱研究も同時に行う。このより単純な流動層については、過去の研究もあるため、可視化研究よりは、太陽シミュレータによる集熱実験を重点的に行う計画である。 以上のように、高難度の課題と、実現可能性が高い課題を同時に進めることで、研究上のリスクを分散して、研究成果に結びつけたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、アメリカ開催のSolarPACESにおいて粒子集熱器の研究情報を収集したところ、ソーラーガスタービンへの応用を想定した研究が多数行われており、米国サンディア国立研究所やドイツDLRによる先進的な研究の情報を得た。また、新潟大学で連携研究している太陽熱燃料化研究グループによって、窓付き流動層の大型化に伴う設計の問題点が見出され、その集熱研究への利用についても先行きの不透明感が感じられた。 このため、本研究では、循環型ないし粒子移送式流動層を新規考案することで、研究を進捗させる必用が生じ、そのような新原理に基づく流動層システムを、当初の予定よりも時間をかけて設計することになり、当初予算の一部を次年度に使用するものとした。 次年度使用とする予算は、主として、新型の循環式ないし移送式流動層集熱器の開発研究のため執行する。難度の高いシステムとなるため、可視化実験を主体とした研究を行い、その成果を踏まえて、太陽シミュレータによる実験に移行する予定である。このため、可視化実験装置の組上げと、集熱実験装置の製作に予算を使用する計画である。 ただし、混相流は単相流のような数値予測が容易ではなく、可視化流動層の設計と装置の調整に試行錯誤が予想されるため、予想以上に時間を要す可能性がある。可視化実験に時間がかかった場合は、その調整や、装置の改造に予算を用いて、太陽シミュレータによる集熱実験は縮小する。また、循環型ないし移送式流動層の困難さが相当高いことが判明した場合は、円筒式流動層の集熱実験により予算を多く使うことも想定している。フレキシブルに研究予算を使用することで、研究成果をより確実に得ることを考えている。
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