研究課題/領域番号 |
25289357
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
松原 幸治 新潟大学, 自然科学系, 教授 (20283004)
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研究分担者 |
長瀬 慶紀 宮崎大学, 工学教育研究部, 准教授 (90180489)
平元 和彦 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (00261652)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 太陽エネルギー / 流動層 / ソーラーレシーバ |
研究実績の概要 |
平成26年度は、多様な条件に対して円筒型流動層レシーバの数値解析を実施し、良好な集熱が達成できる条件について検討した。この円筒型流動層レシーバは、上部に石英窓を有しており、直接、集光照射を粒子層に照射することで効率的な加熱を行なうことを特徴とする。また、分散板の下部の流路を分離し、中心部と外周部から速度差を有する空気を流入し、粒子の組織的内循環を引き起こすことで粒子層全体に均一に熱を伝えることが確認できている。 平成26年度は、この円筒型流動層レシーバとして、30kWth(直径160mm)と35kWth(直径250mm)を想定して数値解析を実施した。数値解析手法としては、これまでに構築したグラニュラーモデルによる固気混相流解析法を採用した。この解析手法は、流動層を正確に解析できることを特徴とするが、一方で、多大な解析時間を要するという問題もある。実時間で3秒程度の解析でも数週間というCPU時間を必要とし、温度場の解析にはさらに長時間が必要となる。このため、最初の3秒のみ流れ場と温度場を連成解析し、その後は流れ場を平均値に固定して温度場のみ解析する手法を採用し、3分間の解析が可能となった。粒子は石英砂とセリアの場合を取り扱い、線速度を様々に変化させて、10ケースの解析を実施した。 数値解析では、実験と同様、粒子の初期温度を900℃に設定したが、集光照射により粒子と導出空気はともに900℃以上に温度上昇できることを確認した。中心部と外周部に速度差を与えた解析では、粒子に組織的循環が生じ、粒子層内の熱移動が促進することを温度分布から観察できた。さらに、外周部が早く、中心部が遅い場合は、当初の予測とはことなり、集光照射する中心部に下降流が生じるため、熱移動が特に良好であることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の主な目的は、流動層レシーバの設計指針を得ることであった。本研究では、この目的に沿って前年度までに構築した流動層解析手法によって多様な条件で数値解析を実施し、10ケースの解析結果を取得できた。流動層の解析は、難度の高いものであり、集光照射した場合の解析は世界的にもほとんど実施されておらず、このような数値解析を複数の条件で実施し、実験では得がたい瞬時の粒子体積分率、流れの圧力分布、流れと粒子のそれぞれの速度ベクトルと温度分布を取得できたことは研究成果であると言える。数値解析によると流動層レシーバ出口で空気温度は900℃を超えていることも確認できた。 さらに数値解析を分析することで、これまでは実験的に得られた温度分布から粒子内循環の効果を推量していたが、数値解析による場の情報に基づいて、粒子内循環の効果によって熱移動が促進される現象を観察できるようになったことも、今後の研究の進展に有効であった。特に、この研究を実施する前は、中心部の空気速度が早く、外周部が遅いときに良好な粒子集熱が得られると予測していたが、数値解析によると、その逆であり、中心部が遅く、外周部が早いときに粒子集熱が良好であった。これは、中心部付近で集光照射された粒子が下降して効果的に混ざるためであった。いずれにしろ、粒子の組織的循環が効果的に熱移動を促進することは間違いないが、粒子の循環方向によって顕著な違いがあること、当初の予測とは反対方向、すなわち、中心部で下降流が起こるときに良好な集熱が得られるという知見を得たことは収穫であった。 以上のように、本研究では、今後の流動層レシーバの開発において粒子循環方向に関して重要な知見が得られたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、平成26年度に得られた知見を活用して、新型レシーバに関して実際の流動層レシーバに近い系で実証を進めることを最優先して研究を推進する。 すなわち、中心部で導入空気速度を低速化することによって粒子内循環を引き起こして粒子集熱を良好にできる可能性が示されたので、これを実現するために、数値解析と実験の両面から研究を推進する。数値解析においては、解析を容易にするため二次元矩形流動層を対象とする。この場合、空気分布に偏りを持たせるには、分散板からの速度に分布を持たせて、中心部の空気を少なくする方法と、流動層内部に柱状物体等の障害物を設置して、強制的に一部の流れを妨げる方法が考えられる。数値解析では、どちらの方がより効率的に働くかを検討する。その上で、太陽シミュレータによる実証試験を行なう計画である。高温型の流動層レシーバの実験はコスト的にも大きくなるため、先ずは、100℃程度の中温での実験を主体に検討する。 本研究では、以上のような粒子集熱法を向上させた新型流動層レシーバの研究を主軸としながら、粒子移動による蓄熱への応用についても検討する。すなわち、加熱を伴わないコールドモデルによって実際に粒子をフィーダによって取り込みつつ、流動層で攪拌し、これを連続的に外部へ排出する系の実験を行なう予定である。この検討のため新たにフィーダを導入する計画である。また高温型流動層レシーバの検討としては、従来型の円筒型流動層レシーバの実験データを採取して検討する予定である。また宮崎大学のビームダウン集光装置を用いて太陽熱燃料化研究が実施されており、その実験の進展状況によっては、本研究のための集熱実験のデータの入手が可能となる可能性があるため、連絡をとりながら機会を伺うことを考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を進める上で、流動層集熱器をガスタービンシステムに組み込む際に必要な補助燃焼器の検討が必要となり、そのために高風量ブロワーを導入して実験するものとした。この検討は、ブロワーの選定に時間を要するため、平成27年度に行なうものとした。
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次年度使用額の使用計画 |
高風量ブロワーを導入して補助燃焼器の検討を行なう。その結果と流動層集熱器の結果を合わせて、実際に流動層集熱器をガスタービンシステムに組み込むための研究資料として取りまとめる。
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