研究課題/領域番号 |
25289360
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
西岡 賢祐 宮崎大学, 工学部, 教授 (00377441)
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研究分担者 |
福山 敦彦 宮崎大学, 工学部, 教授 (10264368)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 多接合型太陽電池 / 高倍率集光動作 / 光照射Hall測定 / 最適設計シミュレーション / キャリア拡散 |
研究実績の概要 |
集光技術の導入によって太陽電池の変換効率向上に加えて材料使用量の飛躍的削減が可能である。本研究では、疑似太陽光あるいは単色光を多接合太陽電池材料に照射しながらHall測定を実施し、高倍率集光動作時に太陽電池特性の劣化を引き起こす支配的なキャリア散乱機構を明らかにする。 昨年度はドーパント量が分かっているn-およびp-type Siを用いて疑似太陽光照射前後のHall測定を実施した結果、両方の試料において照射量増加によりHall移動度は減少しキャリア濃度は増加した。2種類のキャリア発生を想定したHall移動度の理論計算を行い実験結果と比較検討したところ、発生したキャリアの再結合過程や他の散乱過程の関与が示唆された。この結果を受けて今年度(平成28年度)はドーパント量の異なる試料に対する測定を実施した。その結果、全試料において照射光量の増加に伴い移動度が単調減少した。この原因として、光照射により増加したキャリア濃度の影響が考えられるため光励起キャリア濃度を算出したところ、光励起キャリアの増加量はn-Siとp-Siで異なることが分かった。これは光励起キャリアの再結合過程やイオン化不純物散乱などの影響が考えられるが、暗状態で全試料のイオン化率はほぼ100%であったため、イオン化不純物散乱ではなく再結合によってキャリアが消失する割合が異なる可能性が高い。またnおよびp-Siともに、ドーパント濃度が大きいほど移動度減少は小さくなり、光照射の影響を受けにくいことが判明した。ただし、ドーパント濃度が増加するとオージェ再結合確率が上昇するために少数キャリア寿命が低下することが知られており、太陽電池変換効率が低下する。次年度はフレネルレンズを試料直近に設置し、より高い照射光量化での実験・解析を行うことで、集光動作に適切なドーパント濃度を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
様々なドーパント量のn-およびp-type Siを用いての疑似太陽光照射前後のHall測定を実施し、ともにドーパント濃度が大きいほど移動度減少が小さくなり、光照射の影響を受けにくいことを明らかにした。ホール測定装置の試料設置スペースの制限により低倍率集光条件のみの測定に限られているが、集光動作時に移動度の低下をもたらす要因として有益な知見を得られていると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
Hall測定装置の試料設置スペース内にフレネルレンズを組み込むことで4.0 suns以上の光量(~20suns程度)を照射可能にする環境を構築し、より高い集光条件下での影響を調べる予定である。また、多接合型太陽電池に使用されているGaAsなどの化合物半導体に対しても、同様の測定を実施する。それにより、集光動作時における移動度の改善および変換効率向上に寄与する知見が得られると考えられる。
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