研究課題/領域番号 |
25289361
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
二宮 善彦 中部大学, 工学部, 教授 (10164633)
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研究分担者 |
波岡 知昭 中部大学, 工学部, 准教授 (90376955)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 低品位炭 / 燃焼 / PM2.5 / 揮発元素 / ガス化 |
研究概要 |
(1)ガス中のアルカリ金属蒸気を低減するための顆粒吸収剤の効果 2種類の中国産低品位石炭を使用した。吸収剤として顆粒カオリン(粘土鉱物)を使用し、石炭中の(Na+K)に対してモル比をA炭で1.4倍、B炭で2.4倍条件(石炭質量の10wt%)とした。カオリンは45μm以下、45-105μm、106-150μm、150-250μm、250-500μmの粒径範囲の5種類を使用した。燃焼実験は1400℃、空気燃焼およびOxyFuel燃焼(28%酸素/二酸化炭素)で行った。原炭の燃焼実験では、フライアッシュ(粒径:10μm以下)とサイクロンアッシュ(粒径:10μm~30μm)の回収比率は60:40であった。顆粒カオリンを添加することによりA炭では25:75(カオリン粒径:106-150μm)、B炭では10:90(カオリン粒径:150-250μm)まで変化し、サイクロンアッシュの収率を著しく増加させることができた。この理由は、カオリン表面に石炭由来のアルカリ金属およびCa蒸気が吸収されてカオリン表面が溶融し、フライアッシュ粒子が捕捉されためである。低圧カスケードインパクター(LPI)の測定から、特に1μm以下の粒子が捕捉され、主目標であるガス中アルカリ金属蒸気の低減を確認した。なお、空気燃焼とOxyFuel燃焼条件の実験結果にはほとんど差異は認められなかった。 2)燃焼雰囲気における揮発性元素の挙動解明 石英製ロータリーキルン反応装置を使用し、揮発性元素としてPb, Znなどを選び,共存ガス(SO2,HCl,H2O)存在下における生成物の挙動を検討した。空気およびOxyFuel燃焼条件での生成挙動に関してほとんど差異がなかったが、生成PbSO4粒子の粒径は、空気燃焼条件では4μm、OxyFuel燃焼条件では2μmにピークがある粒径分布となり、ガスの熱物性値の差異による影響と推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
粒径範囲の異なる5種類の顆粒カオリンを2種類の石炭にそれぞれ添加して、燃焼実験を行い、燃焼時に発生するアルカリ金属蒸気などの吸収割合を測定し、低減効果を明らかにした。炉の燃焼温度は1400℃に設定し、炉の下部の冷却ゾーンでは、1400~800℃の温度範囲となっている。A炭およびB炭において、カオリン表面に石炭由来のアルカリ金属およびCa蒸気が吸収されてカオリン表面が溶融し、さらにフライアッシュ粒子の捕捉が確認され、平成25年度の主課題の一つは達成されたと評価される。また、石英製ロータリーキルン反応装置を使用した実験においては、Pb,Zn、Cdについて終了した。As,Seについては、試薬の取り扱いと実験上の問題から、ロータリキルン反応装置から流動層燃焼装置を変更して、実験を行った。実験は概ね順調に進んでいると評価される。
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今後の研究の推進方策 |
固体吸着剤として、カオリン(粘土鉱物)を使用してきたが、実用化を考えると異なった種類の粘土鉱物やアルミナシリケートを使用した実験も重要である。そこで、平成26年度は、異なった種類の粘土鉱物やアルミナシリケートを使用した実験を計画したい。 申請時においては、走査式モビリティーパーティクルアナライザーの購入を計画したが、配分額が当初計画案より減額されたため、この装置の購入が不可能となった。このため、本実験で必要な分析装置として、採取灰粒子のアルカリ金属吸収率を粒子別に定量することができるEDAX社製 超微粒子高速解析装置(PM-1)の導入を6ヶ月間検討し、本装置の必要性を認め、平成26年度に購入することを決めた。本解析装置はSEMと連動しており、SEMで撮影した画像を二値化処理して粒子を判別し、その粒子1個1個に、電子線を照射して元素分析を行い、ケミカルクラスライブラリーの設定、クラス分けフィット率の設定を行い、アルカリ金属の吸収率を粒子ごとに評価することができる。 また、固体粒子が存在する条件下でのガス中の揮発性元素の捕捉機構の解明においては、気相析出温度における共存ガスの影響を実験的に確かめる実験を平成26年度に実施する。この実験はフィルターにフライアッシュ成分である酸化鉄、酸化カルシウム、アルミナ微粉末を入れ、金属蒸気がこれらの充填物を通過したときに生成する化合物を同定し、蒸気の捕捉機構を明らかにする。核生成温度が異なる揮発性元素として,Pb, Znなどを選び,共存ガス(SO2,HCl,H2O)による生成化合物の影響を明らかにすることにある。
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次年度の研究費の使用計画 |
申請時においては、走査式モビリティーパーティクルアナライザーの購入を計画したが、配分予算が当初予定額より減額されたため、この装置の購入が不可能となった。そのため、本実験で必要な分析装置として、採取した粒子のアルカリ金属吸収率を粒子別に定量することができるEDAX社製 超微粒子高速解析装置(PM-1)の導入を6ヶ月間検討し、この装置を平成26年度に導入することを決定した。平成25年度と26年度の研究費を合わせて購入する。 EDAX社製 超微粒子高速解析装置(PM-1)の購入 約800万円(消費税込み) 本解析装置はSEMと連動しており、SEMで撮影した画像を二値化処理して粒子を判別し、その粒子1個1個に、電子線を照射して元素分析を行い、ケミカルクラスライブラリーの設定、クラス分けフィット率の設定を行い、アルカリ金属の吸収率を粒子ごとに評価することができ、本研究に必要な装置である。
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