本課題開始までに AlGaAs に埋め込まれた InAs 量子井戸島(QWI)構造により赤外光の可視光へのアップコンバージョンが可能である事を見出し、本課題においては、その効率向上を目指し、アップコンバージョン機構の詳細な解明と QWI 構造の形状(大きさ、密度、間隔、等)の依存性の解明を目指した。 H27年度、QWI を用いた新規構造の設計、分子線エピタキシー(MBE)成長、並びに光計測を行なった。 この結果、局在準位を導入すると、アップコンバージョン効率が向上する事を見出した。 更に、同じ構造でも結晶成長の条件に依存して、アップコンバージョン効率が変わる事も観察された。 具体的には、InAs/GaAs 量子井戸構造を作製する時、一般にはGaAs 障壁層を InAs と同じ温度で成長するが、これをより高温で成長する事で効率向上が図られた。 これは欠陥・不純物の低減等によるものと推察されるが、今後詳しい検討が必要である。 また、H26年度に MBE で作製される QWI 構造の厚さ(これまでの検討より 2 or 3原子層である必要がある)の評価が容易で無いという課題に直面し、これを解決するため、原子間力顕微鏡(AFM)を改良したケルビンプローブ顕微鏡(KFM)を導入し、InAs 表面構造の検討を始め、AlGaAs 上の InAs はポテンシャルの不均一性が生じる事を見出したが、この原因の検討を行った。 その結果、この表面仕事関数の不均一性は歪由来と推察されるとの結論を得た。
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